傘
っていうか天気予報なんて信用出来ません。
だって今朝、天気予報のおねーさん、『今日は一日綺麗な青空が広がるでしょうv』
って言ってたのに・・・・何さっ!!
何が青空ですか!!?今この空を見てもそう言えますかっ!!?
この青春学園の不二くんの腹の中のようなどす黒い空見ても・・・!!
そして聞こえますか?このザーザーと降る雨の音が!!
「ちくしょー!天気予報なんて信用出来るかぁー!」
「馬鹿ねー。この時期に傘くらい用意しとかないが悪いんでしょ。」
雨の降り続ける外を見ながらゲタ箱の前で立ちすくむ私に向かってエミは冷たく言い放った。
それが親友に対するセリフですかい!?
「だって天気予報は降らないって言ってたもん。」
「天気予報が当たった試しがある?」
あぁ、どっかの映画で聞いたセリフ・・・(多分大半の人は分かんないと思いますが;)
「当たったことはあるよ。はずれたこともあるけど。」
「大体6月って言ったら折りたたみ傘の一つや二つ、用意してて当然でしょ。」
傘がなくて動けずにいる私の前でエミはバサッと音を立てて、
持って来ていた折り畳み傘を広げながら言った。
うっわー、それって私に対する嫌がらせですかい!!?
「エミ〜〜親友でしょ!入れてって〜vv」
「馬鹿言わないで。私の折りたたみだから小さいんだから。が入る隙間はありません。」
「酷いっ!!親友でしょ!!」
「たまには自分でなんとかしなさい。じゃ、ばいばいv」
あー、なんかその語尾のハート嫌味っぽいし!!
っていうかさっきまで晴れてたのになんで急にこんな天気に!?
そしてなんで皆傘持ってきてんのよ!!
私以外の生徒たちはみんな傘を持ってきてて、
私の周りではバサバサッで音がしながらみんな傘を差して帰って行きます。
なんでみんな傘持って来てるんですか!
「ちっ・・・もうどうしようも無いのか・・・!くそぉっ!!
こうなったら濡れようが何しようが走って行けば良いんだろちくしょー!」
もうヤケです。土間のところでちょっとでも雨が少なくならないか気配を見ながら
外へ飛び出るチャンスを伺ってました。
「あーもうっ!濡れたって後で拭きゃぁ良いじゃないか!リズムに乗ればなんとかなるわ!」
ってなわけで土間から飛び出て走って行こうとしたわけです。
屋根のあった土間から一歩出て、屋根の無い地面へと踏み出ました。
雨が肩やら頭にあたって冷たくて・・・
「つっめーたー・・・・・・!」
そう言いながら歩き出そうとした時でした。
急に私の肩に降りかかっていた雨が突然当たらなくなって、
なんだか何かで覆われたような気がして、そして後ろから聞こえてきた声・・・・・
「何してるの・・・・・・」
なんかその声があまりに突然で怖くて、お、お化けかっ!?
と思いつつ振り返ってみました。
するとそこに立っていたのはクラスの伊武深司・・・!
雨が突然当たらなくなったのは彼が私に傘を差しててくれたから。。。
所謂「相合傘」ってヤツです。
「え・・・深司じゃん・・・!!アンタ部活も行かずに何やってんの!!?」
「馬鹿でしょ・・・・・今日雨なんだから部活あるわけないじゃん・・・・
っていうか傘一緒に入れてあげてんのにその態度・・・・?
それは無いんじゃないの・・・・。ほんとはさぁ・・・・」
「あーもう分かった分かった!!分かったからぼやくな!!ありがとうございますー!」
ぼやきだすと厄介になるからなー・・・・あ、でも遅かったみたい・・・・
「大体この時期に傘も持ってきてないわけ?
天気予報信じきってるなんてらしいっていうか単純って言うかさぁ・・・・
普通はみんな6月のこの時期なら傘くらい用意してるよね・・・・だけじゃん。
今こうやって傘なくて困ってるの。」
「もう放っておいてくれー!エミにも同じようなこと言われて疲れてるのよ、あたしは!!」
「疲れるほど頭使ってないでしょ・・・・・で・・・いつまでここに突っ立てるの?」
ってか頭は関係ないでしょーが。
「帰ろうと思ってたのに深司が話し掛けてきたんじゃん!」
あっ、余計なこと言ったかも・・・・・
「人が傘入れてあげてんだからさぁ・・・
もうちょっと素直なら可愛いのになぁ・・・・じゃ、帰るよ。」
そう言いながら深司は私を引っ張って傘に一緒に入れてくれたまま歩き出しました。
「ちょっ・・・・これって相合傘じゃん・・・!
誰かに見られたらどうすんの!!私恥ずかしくて学校行けないよ!」
「大丈夫だよ・・・・こんな時間まで帰れずに土間でウロウロしてんのなんてくらいだから。」
「失礼な!ってかアンタはどうなんのよ・・・・・・」
「俺はに傘入れてあげようと思って待ってたんだけど・・・・・」
はい?今何と?
「待ってたって?」
「馬鹿でしょ・・・・。っていうか鈍すぎ・・・・・・・」
「もう!さっきから馬鹿馬鹿って!何回言ったと思ってるの!」
「まだ2回目でしょ・・・・・・・」
しっかり数えてるし・・・・・
「ねぇねぇ、待ってたってなんでわざわざ?」
「それ本気で言ってんの・・・・?」
「何さっ!!私はいつだって本気の本気じゃん・・・!!」
「いや、が本気のとこ見たことないし・・・・・・」
「失敬な。」
そんなよく分からない会話をしてるうちに、深司との相合傘も終わりに近付いてきました。
もう少しで私と深司は別々の道に別れなきゃいけないから。
「あ、深司。ここでお別れだね。とりあえず・・・傘、ありがと・・・・・」
私はちょびっとだけ赤くなりながら深司の傘から出ようとした。
「何言ってるの・・・?このまま出たら濡れちゃうでしょ・・・・
馬鹿だね、ほんと・・・そんなコトも分かんないなんて・・・・」
何を言ってんだよコイツは!!
「失礼な。だってもう家の方向違うんだからしょうがないでしょ!!」
「だから家まで入れてってあげるって言ってんじゃん・・・そのくらい気付いてよ・・・・・」
そう言いながら深司は私を傘に入れたまま私の家の方向の道へと歩き出しました。
「えぇっ・・・・」
なんかあまりに優しい深司に驚いて、ただただ呆然として着いて行く私。
「そんなに驚くこと・・・・・・・?」
「いや・・・深司って意外と優しいトコあるんだなって・・・・・・」
「それってどういう意味・・・・・・」
「だってすぐぼやくし学校だと意地悪だしー・・・・・」
「別に意地悪なつもり無いんだけど・・・・
ただが馬鹿だから本当のこと言ってるだけで・・・・・」
何よそれ・・・!!そういうのを世間一般では意地悪と言うのよ!!
「それに傘入れてあげてんのはが風邪ひいて
学校休んだりしたらいじめる相手いなくなるし・・・。」
やっぱいじめてんじゃんか!!
「でもさー・・・・・」
「でも?」
私は思わず先を聞いてしまった。深司は分からないの?というような顔で私の方を見てる。
「もう良いや・・・・・」
「はい!?」
そこまで言っといてもう良いやは無いんじゃないですかい!?
こんな感じで色々話してるうちに私の家に着いた。
「じゃあね。」
深司は短く私に言った。
「なんか家まで来てもらっちゃってごめん。ありがとね・・・・!」
一応お礼は言わなきゃね・・・散々傘の中でいじめられたわけだけど・・・
そう言って私が家に入ろうとした時でした。
「ねぇ・・・・・」
傘から出ようとした私に深司が話し掛けてきたのです。
「好きでもない女の子を傘に入れて家まで送って来たりすると思ってんの・・・・?」
「え・・・?」
「分かんないなら良いよ、もう・・・・・」
それだけ言うと深司は自分の家の方へと歩いて行ってしまった。
しばらくその場で硬直してしまって動けなかった私。
深司が10mくらい私から離れて行ったところでやっと声が出せた。
「あ・・・・あたしも・・好き・・・だから・・・・」
すごく小さい声だったから、
雨のザーッという音にかき消されて深司には届いて無かったかもしれない。
でも届いてたら良いのにね・・・
雨が私の声、深司のところまで運んでくれてたら良いのにな・・・。
あぁっ・・・相合傘・・・・・・
良いよね、深司に入れてもらうなんて・・・・v
深司って結構面倒見良さそうだしなー・・・・・v
っていうか久しぶりに結構長くなったよ!まぁ余分なシーンが多いのですが。
それにしてもいぶきの不動峰ブーム・・・当分おさまりそうに無いのです。
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