雨宿りと間接キス


「うぅ〜なんっか不安だなぁ〜」

今日もお天気お姉さんは雨降らないって言ってたんですよ。
確かに今は雨降っていません。今は・・・・・


何してんの?帰らないの?」
「いや帰ろうとは思ってるんだけどなんか雨降りそうな空してない?」
「あんたこの前の雨で相当辛い思いしたのね〜。あっはっは。」
エミは笑いながら半ば楽しそうに言った。


あははじゃないよ全く・・・この前雨が降った日私が深司の傘に無理矢理入れられて・・・
そりゃまぁ嬉しいことは嬉しかったんだけどさぁ・・・


「ま、心配なら今日学校泊まっていけば?私はさっさと家に帰るからねv」
それが親友に対してのセリフですか、エミ。
それだけ言うとエミは先に帰ってしまった。酷い!!っていうか私で遊んでるでしょ!!



でもこんなとこでじっとしてても意味ないし
「とりあえず帰るか・・・・・」

というわけで土間を出て普通に歩き出しました。
そして校門を出てしばらく歩いて行った時、
私の前を歩いている彼に気付いてしまったのです。

「深司・・・!!?」

なんかすごく驚いてしまったので思わず声をあげてしまったわけですよ。
「なんだか・・・そんなに驚くことでもないでしょ、
 同じ学校なんだから同じ道通ってても普通じゃん・・・」

う・・・言われてみれば。

「でもちょっと待ってよ!?部活は!!?」
「この前もおんなじこと聞いてたよね・・・今日は橘さんが学校休みだったから休み。」
「休み?橘先輩が?」
「そうだよ。」
「橘先輩って杏ちゃんのお兄さんでしょ?どうかしたの?」
「風邪だって。」


何とも意外!っていうかあの人って風邪ひくんだなぁ・・・・(謎)
っていうより風邪ひいても学校来てそうな感じするんだけど・・・・


私がそんな風に思考を動かしてると深司がまた話し出した。
「じゃ、俺これから橘さんの家お見舞いに行くから。」
そう言ってまたスタスタと歩き出してしまった。


「あ、待ってよ深司!私も行く!!」
「なんでが来るのさ・・・・・・別に橘さんと関わりないでしょ・・・」
「だって杏ちゃんのお兄ちゃんじゃん!関わりありすぎ!!」
「全然ないし・・・・」
「良いじゃん別に!」

そう言って私は強引に深司について行くことになりました。
深司は「なんでが・・・」とかぼやいてましたがそんなことは気にせずです。



「杏ちゃんの家ってどこだっけ?」
「家も知らないのに行くんだ・・・・・」
「深司が知ってるんだから別に良いじゃん。」
「人任せだね・・・・・」
そんな感じで会話が盛り上がりかけた(エッ!?)時のことです。



ポツン



肩になにやら冷たいものが当たったような気がするんですけど・・・・

「ねぇ深司・・・・・」

「何・・・・」

「雨、降ってない?」

私が言うと深司も気付いたようで「あっ」と言いながら一瞬立ち止まった。
ポツリポツリという雨の音は次第に激しくなっていく。

「深司!かさ、かさ!!」
私はそう言ってまたちゃっかりと深司の傘に入る気でした。
だって深司って何気に面倒見良いし・・・・
「なんでっていつもそうやって人任せなのさ・・・・俺今日は傘なんて持ってきてないよ。」

何でスト!?

雨はどんどん強くなってきています。
さっきはポツリポツリだった効果音も今はザーザーの方が合うくらい。

「だって深司!今の時期なら傘くらい持ってきて普通だって・・・!!」
「今日はどう考えても朝見た時は降りそうになかったし・・・・・」
「なんじゃそれは!ってか前回あんな偉そうなこと言ってた割に随分いい加減ね!」

なんだか深司にやっと勝てた気がして
嬉しさと傘がなくてどうしようという気持ちが微妙に交じり合っていた。

「なんか酷くなってきたし・・・とりあえずその辺で雨宿りした方がよくない?」
おぉ!意外と冷静ですわね深司!!
深司が指差したのはすぐ側にあった自販機のある休憩所みたいなとこ。
ささやかではあるが屋根のような物はついている。
雨宿りのためのような場所だ。

「うん、じゃああそこ行こう・・・・・」



そんなわけで私と深司は休憩所まで全速力で走って行きました。
「ヤダー!びしょ濡れ〜」
そう言いながら私はカバンからタオルを取り出して腕や顔を拭いた。
「深司、使う?」
そう言ってせっかくタオルを差し出してあげたというのに・・・・!

「俺だってタオルくらい持ってるに決まってるじゃん・・・・・」
そう言って自分のカバンからタオル取り出してました。
考えてみればテニス部だもんね・・・・タオルくらい持ってて当たり前か・・・

「ねぇ深司〜喉渇かない?」
「ちょっとね・・・・」
「やっぱり〜!だってさっき走って来たしさぁ〜!」
そう言いながら私は何故か学校に持ってきている財布を取り出した。
「せっかく自販機あるし♪」
「学校に財布持ってきてて・・・・先生にバレても知らないよ・・・・」

とか言いつつもあなたがカバンから取り出してる物は財布じゃないんですか!!?

「人のこと言えてないじゃん・・・・」
「俺は今朝、昼用の弁当買った時の残りがあるだけだし・・・・」
納得。


そうして私は財布を開けて中を見た。
「あ、あれ・・・?」
財布の中身:80円
「あっ、そういえば昨日と出掛けてお金使い切っちゃったんだっけ・・・・」

「馬鹿だね・・・・」
「深司〜!いくら持ってる〜〜??」
私はちょっと甘えるような声で言ってみた。
「変な声出さないでよ・・・・言ったでしょ、俺は今朝の弁当代の残りだって。65円しかない。」
「うわっ!!貧乏性ね!!!なんでもっと多めに持ってこないのよ〜!」
私は全財産の80円を手のひらにのせて喚いた。


「買えるじゃん・・・・・」


深司は私の手のひらに置かれた80円を覗き込んで言った。
「え?」
「だから、俺のとの合わせれば1本買えるでしょ・・・・・そんなことも分からないの?」
「え、そ、そのくらい分かるけど、1本なんてどっちが飲むの!?」
「別にどっちなんて決めなくても良いじゃん・・・・・半分でも飲めないよりマシでしょ・・・・」

「ふえ?」

間抜けっぽい声を出して呆然とする私の手から80円を持っていくと
深司は自販機の前へと行ってしまった。


っていうか半分って・・・・間接キス・・・・・・?


「ファンタで良い?」
すでにジュースを買う体制に入っている。
私はポカンとしていたがハッと我にかえって言った。

「え、駄目!私炭酸飲めないし!」
「中学生にもなって炭酸も飲めないの・・・?じゃあ何なら飲めるのさ・・・・」
ムカッ!炭酸じゃなくてもジュースはあるもん!

「アクエリアスが良い〜!」
「アクエリアス無いし・・・ポカリならある・・・・・」
「えぇ〜ポカリよりアクエの方が美味しいんだよ!!」
「大して違い無いでしょ・・・・」
そう言いながら深司は自販機のボタンをすでに押していた。
プシュッと缶のフタを開けると私に差し出して言った。

「先飲んで良いけど、半分だからね。半額ずつ出したんだから・・・・」
そう言いながら20円も返してきた。
「え、あ、うん・・・・」
そう返事をすると私はその缶を受け取り約半分一気に飲み干してしまった。


「ハイ、深司・・・・あっ、口元拭いた方が良い??」
私は深司にジュースを渡しながら言った。
「別に良い・・・・・」
それだけ言うと深司はジュースを受け取って残りを飲んでいた。

「ねぇ、深司・・・・嫌じゃないの・・・・?」

「何が?」

「だって間接キスじゃん・・・・」


「別に・・・・じゃあこれ・・・・・・」
そう言うと深司はまたジュースを私に差し出す。
中身は5分の1くらい残ってる。
「え?なんで?残り半分は深司のでしょ?」


「だってこれじゃ駄目でしょ・・・・
俺だけと間接キスするなんて・・・・もこの残り飲んで・・・・・」


な、な、な!!
なんかやさしさなんだかよく分からないけど・・・嬉しいよーな恥ずかしいよーな・・・・・
「う、うん・・・・」

結局私はそのジュース飲んでしまいました。
なんか自分の気持ちにウソってつけないね・・・・結構嬉しかったり・・・・

雨はまだ降り続けています。
このままずっと雨が止まなければこのままずっと深司と一緒にいられるのかな・・・・・





雨シリーズ(謎)第2弾!
ってか深司意地悪だけど優しいし・・・・vそんなトコがツボなんです・・・・Vv
っていうより橘さんの風邪は無理があるよ、うん・・・
だってそのくらいしか二人が一緒に帰ってくれそうな理由思いつかなかったものですから・・・・
ちなみにジュースで炭酸飲めないのは私です。
そしてポカリよりアクエの方が美味しいと思うのも私・・・・・
ってか炭酸マジで苦手・・・・なんか後の感覚が嫌っぽい・・・・