口げんか


「うおおおぉぉぉ!リズムを上げるぜぇっ!!」


現在の時刻8時24分38秒。
神尾アキラ、不動峰中に向かって、自転車にて爆走中。
どうやら遅刻スレスレの模様です。

(よし!このまま行けば余裕で間に合うぜ♪
 スピードエースの俺が遅刻なんてするはずねーなっ♪)


そう思っていた神尾。
だが、目の前に写った一人の少女の姿によって、彼の計画は崩れる。


「あーもうーっ!!時計の馬鹿っぁーーー!!」


(!!??)
神尾が見たもの、それはそう叫びながら走っている一人の少女の姿だ。

っ!?」
自転車のスピードを少し下げながら神尾が思わず叫んだ。
「んあっ!?か、神尾!?」
走っていた少女・は突然名前を呼ばれたのでびっくりして振り返った。

「何してんだよ!?」
「見りゃ分かるでしょ!走ってんの!!」
「んなもん見りゃ分かる!
 なんでこんな時間にこんなとこ走ってんだって聞いてんだよ!!」
「最初からそう聞きなさい!!そんなの遅刻しないために決まってんでしょ!!」


そう叫ぶと「ハッ!そうだった!」と言いながらまた走り出した。
神尾に呼び止められたことで自分の置かれている立場を忘れていたらしい。



「あっ、おいお前!このまま走って行ったって間に合わないぜ!?」
の隣で自転車をこぎながら神尾が言った。
「神尾が話し掛けなければ間に合ってたもん!神尾のせいだぞ!!」
「あぁ!?馬鹿言え!俺が話し掛けなくてもお前は間に合わなかっただろ!」
「神尾が話し掛けたんだから神尾のせいだ。」
「無茶苦茶な理屈だな・・・・」

「だってそうだもん!!もし遅刻したら責任取ってよ!!」
「馬鹿なこと言ってんじゃねーよ。
 俺だってお前と話してたせいで遅刻しそうになっちまったんだぜ!」
そんなやり取りをしながらは走り、神尾は自転車、並んで学校まで走って行きました。

「あぁっ!ムカツク!!神尾の馬鹿ぁーーー!!」
「だからよぉ・・・・」

「あっそうだ!!責任取ってくれるよね!?」


そう言ってニヤリと笑う。嫌な予感が神尾の頭を過ぎった。


「よろしくぅっ!」
そう言ったかと思うと、は神尾の肩に手をかけ、ヒョイ、と自転車の後ろに飛び乗った。

「うわっ!何やってんだよっ!!?」
「何って、見りゃ分かるっしょ?自転車、乗せてってよね。」

重さでバランスが崩れそうになるので一度止まろうかと思ったが、
こんなとこで止まったりしたら、それこそ遅刻決定だ。


神尾は自転車をこぎ続けながらに言う。
「冗談言うなよ!!降りろ!重い!」
「失礼な!私そんなに重くなくってよ!!」
「馬鹿っ!自転車は一人で乗るもんなんだよ!!」
「何言ってんのよ!今時自転車はニケツが常識よ!!」
「良いから降りろ!」
「やだっ!」
「降りろっ!」

「神尾のせいで遅刻するんだもん!!」
「あのなー!!」



だが、いくら言っても無駄だと思った神尾は仕方なく、自転車を走らせることにした。
「ったく・・・!このままじゃ結局遅刻しちまうじゃねーか!!
 良いか!リズムをあげるからな!」

「リズムを上げるって・・・・?」

神尾の言葉を理解できないが不思議そうに聞いた。

「うおおぉぉぉ!」
神尾は全速力でこいだ。

「は、はい!?ちょっ、神尾!怖いじゃない!!」
「んなもん知るか!乗ったお前が悪い!!」

「馬鹿馬鹿ぁ〜〜!!一体何キロ出してんのよーー!」
そう叫びながらはグイッと神尾の腰にしがみついた。
「うわっ!くっつくなよ!!こぎにくいじゃねーか!!」
「神尾が速過ぎるのよ!!もっとスピード落としなさい!!」
風の音でかき消されそうな声で叫ぶ。
こんなに近くにいるのに、二人とも大声で叫んでいるのです。


「馬鹿言え!遅刻したいのか!!」
「私スピード恐怖症なのよ!」

「何だよソレ・・・んなもん聞いたことねーぞ・・・・・」
「小学校で習ったでしょ!?自転車のスピード出しすぎ注意って!」
「じゃあお前だって二人乗り禁止って習っただろ!」
「そんなもんイチイチ覚えてられるかぁっ!!」

そう言うとは恐怖でギュッと目をつぶって
神尾にしがみついていた手をさらに強くしがみつく。


「うわっ!ヤバイって、!マジで離れっ・・・・・・」



ガシャーン



「「痛たたたた・・・・・」」
倒れた自転車、そして投げ出された二人は足を抑えながらしゃがみこんでいた。

「ったく何しやがんだよ!!」
「神尾が悪いのっ!!いったー・・・・・うわっ!血出てるよ、血っ!!」

「(コイツもしかして小学生以下に怖がりなんじゃ・・・)一番の被害者は俺だろーがっ!!」
「被害はどっちも同じでしょ!!大体、神尾が転ぶからいけないのよっ!!」
「あのなー!がしがみついてきたから転んだんだぞ!!」
「神尾がスピード出しすぎるのが悪いのっ!!」

すでに時刻は授業開始1分前。だがそんなことは忘れて二人の口げんかは続きます。

「スピード出さなきゃ遅刻するだろうが!!大体、が無理矢理乗ったんだろ!」
「神尾が話し掛けたから遅刻しそうになったんじゃない!!」
「俺が話し掛けなくてもは遅刻だぜ!それより悲惨なのは俺だろ!
 お前に会わなきゃ余裕で間に合ってたのに!」
「ひっどーい!私悪くなんかない!目覚し時計が悪いのよ!」
「知るかよ!!」


このままではこの口げんかは永遠に続くのではないか、と思われた時。




キーーンコーーンカーーンコーーン



「「ハッ!!」」


チャイムが鳴ってしまった=二人は遅刻

のせいだっ!!くそぉっ!」
そう言いながら神尾は自転車に乗った。

「あっ待て!最後まで責任取れっ!!」

こぎ出そうとしていた神尾の後ろにも飛び乗った。

「お前まだ懲りねーのかよ!」
「さっさと、行きなさい、神尾!!」
「何様だっつーの!!」
そう言うと神尾はまたこぎだした。


でも、なんかそのスピードはさっきほどは速くなくて、
ほんの少しではあるけれど、のためにゆっくりにしてくれたみたい。
もしかしたらもうどうせ遅刻なんだから、って思っただけかもしれないけれど、
それでもは神尾がスピードを落としてくれたのが、なんとなく嬉しく思えた。




「「遅れてすみませんっ!!」」
二人は学校の教室に着くと、ドアをガラリと開けてハモった。

「神尾、!二人とも遅刻だ!!何をしてた!!」
「うわー!お前ら出来てたのかよ!」
「神尾も隅に置けねーな!ハハ・・!」
っ!いつから神尾くんと付き合ってたのっ!!?」
教室中からひやかす声が聞こえてくる。


「「付き合ってない!!」」


お見事、二人の声はハモった。
「静かにしなさい!で、二人とも、遅刻したわけは・・・!?」
先生の一声で教室は静かになった。そして二人の方を向き直ると二人に聞いた。


「神尾が話し掛けてきたの!」
のせいで自転車こけた!!」
「先生聞いてください!神尾ったらスピードオーバーなんですよ!」
のやつ、無理矢理ニケツしてきて!!」



「二人とも黙りなさい!!」
先生は呆れ返ったように言った。
「で、どっちが悪いんだ?」
「神尾!」「!」
二人は同時に言った。


「二人とも今日の午後、掃除当番だ!!!!!!」


先生の大激怒の声が学校中に響いた。





珍しく不動峰です!そしてリズムの神尾!!
にしてもコレあんまりドリームじゃない・・・・(汗)
だって結局口げんかしかしてないし。
でも、なんとなく神尾=自転車(=桃城)ってイメージ強かったんですよねー・・・
このネタ、桃ちゃんで使っても良かったんだけど、管理人の趣味により他校で!!