これぞ庶民の味

顔は物凄くかっこいい、これは認めざるを得ない気がします。
認めたくなくても事実から逃げようとするほどあたしだって子供じゃないですからね。
次に運動神経が良い。これも否定出来ないと思います。
テニス部の部長で部員200人もの信頼を得ているわけですから。
そして頭が良い。これが何とも不思議なのですがこれも事実です。
あんなに部活ばっかりやってるように見えるのに成績はいつも上位なんです。


神様はなんでこんなに不公平に人間を作るのでしょうね。
嗚呼うらむよ神様!!


「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず。」
だけどあの跡部景吾を見ているとそれはどうも納得出来ないんです、福沢さん。


そしてその完璧!ともいえる人間・・・かと思いきや、それに比例するくらい性格も悪いんです。
最低です。あんな人いません。
あの才能を少しで良いから性格の方に分けてあげてほしかったですよ神様。


あ、もう一つ忘れてました。
彼はさらにすんごいお金持ち(だと思う)。
あの態度とか持ち物とか色々見てると分かります。


それで私が最近彼のことで気になるのは彼のお昼ごはんのことです。
跡部くんのお弁当って想像出来ます?
母親が作るのか執事さんが作るのか分からないけれど、
跡部くんが毎朝テーブルの上に置いてあるお弁当持って学校に来るところ、想像出来ますか?

私は全く想像出来ないんです。似合わないも良いとこだと思います。
でも、だからってお金持ちの跡部くんがコンビニ弁当ってのも考えにくい・・・
学食だってきっとおぼっちゃまからすればあんまり美味しいモノでも無いと思う。



そこで私は作戦を立てました。
名付けて、
『彼のお弁当を探ろう!』作戦です。



4時間目のチャイムが鳴って、みんなお弁当を食べるためにあちこちに散って行きます。
うちの学校は別に何処で食べるとかの指定は無いので、みんな自由に移動していきます。
あ、跡部くんも教室を出ました!どこへ食べに行くんでしょう??

ー。お弁当食べようー。」
この子はいつも私が一緒にお弁当を食べている瑠璃。
だけどごめんね瑠璃。今日私はどうしても探らなくてはならない任務を抱えているのですよ。
「ごめん瑠璃!あたし今日ちょっと別のところに用事があるの!」
私はそう言って頭の前で手を合わせて瑠璃に言うと、跡部くんの後を追うように教室を出ました。


跡部くんは手をポケットに突っ込んだまま一人で歩いて行きます。
特に誰かと食べるワケでもなさそうです。

彼はずっと歩き続けていて、気付けばもう校舎の外へ来ていました。
私はコソコソと陰に隠れながら彼の後を追い続けます。
念のために言うと、これはストーカーではありません。えぇ、断じて違います。
ただただ任務遂行のための不可抗力です、はい。


跡部くんは校庭の隅っこの木陰まで来ると、そのままそこにどさっと腰を下ろしました。

って・・・・なんでこんなところに!?
しかも彼は一人のようです。彼女が来る気配とか、全くありません!
じゃあ彼はここで一人寂しくお弁当を食べるんですか!?
あの
天下の跡部様がこんなところで一人さびしく・・・?

それって面白すぎ!!
しかも食べてるお弁当がロー○ンのおにぎりとかだったら尚更ウケます!!
なんか跡部くんのすごい弱みを握った気分です!!きゃーv


「おい・・・・」
私がそんなことを考えていると、木陰に座っていた跡部くんがゆっくりとした口調で言いました。
私は一瞬どっきりしました。

も、もしかして・・・私・・・ですか・・・??


「おい・・・。お前だよお前!」
跡部くんは私の方向を向いて、怒鳴りつけるようにそう言います。

や、やっぱり私ですか・・・・!!?なんでバレたんですかっ・・・!!??

私は恐る恐る陰から出ていきました。
「こ、こんにちは跡部くん・・・・」
やっと私の口から出てきた第一声がこれだったのは我ながら情けなかったと思います。

「何してんだ・・・俺様の後をつけるなんて良い度胸じゃねーか。」
前から思ってたんだけど・・・・

『俺様』って・・・

今時小学生のガキ大将でも言わないと思う・・・まぁどうでも良いんですけどね。


「えー、えーっと・・・跡部くんはお昼の時間になるといつもどっか行っちゃうし、
 どこ行ってるのかなーって思って・・・それで後をつけてみました。」
隠しても無駄そうなので正直に言っていこう、うん。
「んなことお前に関係あんのかよ。」
「いえ。ただの好奇心です。」
うわー・・怖いです神様!
貴方を先ほど恨んだことは謝ります!どうか命だけは・・・!!(涙)

「・・・・・・・」
跡部くんは黙ったまま私をじっと見ていた。
私も沈黙したまま彼を見ている。目を逸らしたいのだが、なんとなく怖い。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
あぁどうすれば良いのよ!

「フフン・・・お前、俺のこと好きなのかよ。」
やっと出た言葉がそれかいっ!

ってかそんな
滅相もございません!!
そんな『跡部様親衛隊』の皆さんに木刀で喧嘩売るようなマネ・・・
断じて出来ませんとも!!


「いえ・・・私はただの好奇心ですから。」
作り笑いを浮かべながら私は顔の前で両手を振って否定した。
「フン・・好奇心だけで人の後付けてきてストーカーに成り下がってんのかよ?」
「・・・・・・・(涙)」
泣きたいです!もう自分の未熟さを実感です・・・
私はなんて馬鹿なことをしてしまったんでしょう・・・よりによってこんな人の後を付けるなんて・・・!!

「ま、別に良いけどな。俺に惚れねぇ女はそういねぇよ。」

どこから来るんですかその自信!!!

っつか私は別に惚れてません!
と言いたくても言えないのが情けないです、ハイ・・・悲しきかな、弱肉強食・・・(違)


「あ、あの・・・跡部くんはお弁当食べないの?」
とりあえずなんとか場を取り繕わなくては!!
「別に。」

いや、あの・・・別にって何よ・・・答えになってないし・・・・・

「なんで何にも食べないの?」
「面倒だから。」
「は、はぁ・・・・・」
「母親が毎朝作ってるけどよ、俺アイツの飯食うの嫌いだし。」
アイツって・・・仮にもお母さんなのに・・・・
「でもお腹空かない?」
「空いた時は適当になんか買ってきて食う。」
「跡部くんでもコンビニのものとか食べるのっ!?」
滅茶苦茶意外だ。
「バーカ。俺様がんなモン食うかよ。適当に、何でも買おうと思えば買えるしな。」

じゃあ何ですか、貴方はお腹が空いた時ならステーキだろうとなんでも食べられると?
あぁそりゃ性格も捻じ曲がるはずよね・・・・

「でもさ、コンビニの食べ物って最近結構美味しくなってきてるんだよ。」
「俺様の口には合わねぇんだよ。」
「『口には合わない』って言うってことは食べたことはあるんだ?」
「・・・・・・」
「都合が悪くなったら黙るのかよ!ガキかあんたは!」
「んだとっ!?」

あ、コイツ結構面白いかも・・・・うん。小学生並かもしんない。


「たまにはさ、こういうのも良いもんだよ。」
そう言って私は彼の隣にスッと座った。
「近寄るんじゃねぇよ。俺に構うな。」
「ねぇねぇ!このおにぎり美味しいんだってばマジで!鮭の塩加減とか最高だし。」
「知るかよ。」
「食べてみなよ。」
「やなこった。」
「食べてよ。」
「嫌だっつってんだろ。」
「食べなさい。」
「なんで命令なんだよっ!」

「成長期のお子様が食べないなんて駄目よ!ほらほらぁ!」
そう言って私は彼の手に無理矢理おにぎりを押し付けてやった。
あぁなんかすんごい優越感!!

「なんで俺がこんなモン・・・・」
「良いから!私にとっては貴重な120円だったんだよ。」
「じゃあ自分で食えば良いだろ。」
「おぼっちゃまに庶民の味を教えてあげようと思ってやってるんですよ。」
「・・・・・・・」
呆れたのか諦めたのか分からないけど、跡部くんは少し黙ってしばらくそのおにぎりを見ていた。


「おい・・・・」
相変わらずえばった声だ。
「何?」
「これ、どうやって開けるんだ?」


「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・ぷっ・・・あっはっは!!マジマジ?跡部くんマジで分かんないのっ!?」
すんごい勝った気分です!勝ったんですよ私!あの天下の跡部様に!
「わ、笑うなっ!俺様はこんな庶民の食べ物は食わねーんだよ。」
私はまだ笑いが止まらなかった。
そしてようやく落ち着いてきたところで、彼に向かって説明始めた。

「これね、ここを引っ張ると・・・ほら。」
「・・・・・・・」
「見直した?」
「ぜんぜん。」

そう言いながらも彼は私のおにぎりを持っていって食べていた。



「美味しい?」
「マジィ。」
「素直じゃないね。」
「けっ・・・・////もういらねーよこんなもん。」
「食べ始めたんなら最後まで食べてよ。」
「残りはテメェが食えよ。」
「嫌だよ。だって間接キスじゃん。」
「良いだろ別に。お前は俺のこと好きなんだし。」
「好きじゃないし。」


「フン。良いコト教えてやるよ。
 俺様は今まで女と一緒に昼飯食べたことなんて無いぜ。
 お前がはじめてだ。良かったな。」


いや、ちっとも嬉しくないですよ!!!
どうしたらそこまで自信過剰になれるのか、幸せな人だと思います跡部くん。

って・・・そんなこと言ってもしょうがないか・・・
ま、なんとなく面白い人だ、ってことが分かっただけでも・・・ちょっと良い日だったかも・・・・・

なんかドリームっぽく無いかも・・・・
恋愛要素は薄めでつくってみました。ってか無駄に長すぎ・・・(涙)
なんか私すんごい思うんですけどー・・跡部がお弁当持ってきてるって想像出来ねぇ・・・!!
だからって学校の購買買ってるところもとても考えられません・・・!!
というワケでこの話が突発で思いついたワケで。

出来れば続編も書く気満々な私です。
にしても名前変換少なッ!跡部から一回も名前呼ばれてないし!!