二人だけの雪だるま

12月25日
沢山の恋人はこの日の夜をどう過ごすのだろうか。

今年は雪が降った。
真っ白に輝くホワイトクリスマスだ。

街はイルミネーションに彩られ、
至る所でケーキやツリーの飾りが売られている。

普通の恋人なら、ケーキを一緒に食べて、そのままあまーい夜をすごして・・・みたいなのが普通だと思う。
いや、普通じゃなくてもそれが理想と言うモノだろう。


しかし、彼らの場合は少し違っていた。


「岳ちゃん、明日のクリスマス、どっか行こうよ。」
「あ、ワリィ!俺クリスマスの日弟'sの面倒見なきゃなんねーの!」
「え?何その弟'sって・・・・」
「そのまんま。だって一人じゃないから’ふくすうけい’だろ?」
’’の部分をやたら言いにくそうに岳人が答えた。

「無理して難しい言葉使わなくても良いんだよ、岳ちゃん・・・・」
「うるせぇ!無理なんかしてねぇよ!!」
の言葉に顔を赤くする岳人少年。

「俺の両親がさ、クリスマス仕事に行くっつーんで弟たち見てろってさ。だから無理。」
「何それー・・・折角のクリスマスなのに?」
「しょーがねーじゃん。とにかく駄目なもんは駄目なんだよ!」
残念そうに言うを見て岳人は少し言いにくそうに答えた。

「じゃあ岳人ん家行ったら駄目?」
「駄目!」
「なんで。」
「散らかってるから!」
「何を今更・・・・」
呆れたような言い方で。

「とにかく駄目!だめなモンは駄目!」


結局が折れて、クリスマスの夜は誰とも過ごせないこととなってしまった。

「(折角岳ちゃんと過ごせると思って楽しみにしてたのになぁ・・・)」
は寂しくて仕方無かった。

なんで岳人はあんなに必死に拒否していたのだろう。
もしかしたら自分以外の誰か女の子とすごすのかも、とか。
いやいや岳ちゃんは忍足や跡部みたいに人気高くないからそれは無理だろう、とか。
それならじゃあ岳人は自分のことを嫌っているのではないだろう、とか。


考えれば考えるほど寂しくなっていくのがわかった。

「(あーもう嫌ー・・・考えるのやめよう・・・今日は寝る!それが良いや!!!)」


そう思ってまだ9時だというのに布団に潜り込んでしまった。

25日の夜9時に寝てる中学3年生がどこにいるのだろう、など色々考えながら。


夢の中へと入って行っているときだった。


――――・・っ・・・っ・・・・・


誰かが、呼ぶ声がした。


――――・・・っ・・・・


誰だろう・・・・・


ふと目が覚めた。
そこには誰もいない。


――――・・・・っ・・!!!


声がした。
窓の外からうっすらと漏れてくるような小さな声・・・



「(・・・誰・・・?)」
寝ぼけながら目をこすり、は窓を開けてみた。


っ!やっと出てきた!!!」
「岳ちゃん!?」
窓から見下ろすと真っ白な雪の中に立っていたのは岳人だった。
隣に弟を二人連れていて、に思いっきり大きく手を振った。

!ちょっと外出てきてくれよっ!!親とかにはバレないようにしろよ!」


岳人は携帯を持っていなかった。
だからこんな時間にの家のチャイムを鳴らすのはマズイ、と考えると、
大声で窓越に叫ぶしかなかったようだ。


は慌てて着替え、コートとマフラー・手袋をすると
親に気づかれないように、静かに階段を下りて、外へと出て行った。


、メリークリスマス。」
そう言って岳人が差し出してきたのは岳人の手のひらにおさまってしまうほどの大きさの雪だるま。
「・・・これ、岳ちゃんが作ったの・・・?」
「そ♪ほんとはデカイの作ろうと思ってたけど、持ってくるの大変だしなぁ。」
そう言って岳人は少し笑っていた。

「弟たちと一緒に遊んでたんだけどさ、も一緒に遊ぼうぜ?雪合戦。」
「そんな子供じゃないんだから・・・・」
楽しそうに笑いかける岳人にの冷めた一言がとんだ。

「子供じゃん。」
岳人は負けじと答える。
「電車は大人料金だよ、あたしたち。」
「俺今でも小学生で乗ってるぜ?バレないし。」
「犯罪なんだよ、それ・・・・」


の口調は冷め切っているようだった。
だけれど顔は、
岳人の雪だるまを見た顔は、ほんの少しだけ緩んでいたように見えた。


「それ、プレゼントな!」
嬉しそうに雪だるまを見つめるを見て満足げに岳人が言った。
「うっわー、安上がり!」
はクスクス笑いながらからかうように笑った。

「しょうがねぇだろ!俺この前ゲーム買っちゃったせいで金無かったんだし!一生懸命作ったんだぜ、これ!」
「あたしはゲーム以下なんだぁ・・・・」
岳人の必死の説得に、は相変わらず微笑んだまま答える。

「んなワケないって!ふかこうりょくだよ、ふかこうりょく!!」
「無理して難しい言葉使わなくて良いよ、岳ちゃん。」
「うるせぇ!無理なんかしてねぇよ!!」

の表情は変わらなかった。
それとは反対に、岳人の表情はくるくると変わっていく。
にはそれも面白くてたまらないことだった。


「ありがとね、岳ちゃん・・・大事にするよ、雪だるま。明日には溶けてそうだけど。」
「大丈夫だって。雪だるまは溶けても俺らの愛は溶けないぜ?」
自信満々にかっこつけるかのようにセリフを吐いた。
「そのセリフ誰から習ったの・・・跡部?忍足?」
「ん?跡部がこの前どっかの女に言ってた・・・・って何言わせるんだよ!」
言いかけて顔を真っ赤にしながら岳人が言った。
「だって岳ちゃんが言うセリフっぽくないもん・・・・」
「うるせぇ!俺だって一生懸命考えたんだぞ!!!」

顔を真っ赤にする岳人とは反対に、は相変わらずクスクス笑っていた。


「でも嬉しいよ。ありがと・・・溶けちゃっても、岳ちゃんがくれたモノだから嬉しい。」
のセリフも十分クサイじゃん。」
「うん、クサイかも。だってクリスマスだもんね・・・・」
「あぁ、クリスマスだもんな。」


「「ぷっ・・・あはは・・・!!」」
言ってて、なんとなくおかしくて、二人同時に笑ってしまった。

「じゃあまたな、!俺そろそろ帰らなきゃ!弟もいるしさ。」


岳人は両隣にいた弟を連れて家へと向かって歩き出した。


は雪だるまをどうしようかと悩んだ結果、玄関先にそっと飾って置いておいた。
親に何か言われたら自分で作った、って言えば良いと思った。

何より、明日には溶けてるだろうな、と思っていた。




翌日、何だか分からないけどはやたら早く目が覚めてしまった。
昨日の余韻に浸っているせいか、なんとなくしっかり眠れなかったようだ。

とりあえず起きた時に思い浮かんだのは昨日の雪だるまのことで。
どうなっただろう、と思い、階段を下りて、玄関先へと向かった。


「やっぱりな・・・・」
雪だるまは半分くらい溶けていて、もう『雪だるま』とは判別出来なかった。

「しょうがないよね、雪だるまだもん・・・・」


そう思い、じっとその雪だるまを見ていた時だった。

―・・・あれ・・・?

その中に何かが光っているのが見えた。

ふと手に取って見てみる。


「指輪・・・・?」

それは綺麗な指輪。
溶けた雪だるまの中から出てきたのは指輪だった。

「あ、まだ何かある・・・・」
ビニールに包まれた、小さな紙キレのようなモノ。

そこには岳人の決して綺麗とは言えない字でこう書いてあった。


『メリークリスマス、
 これ、俺の全財産だからな!指輪、有難く受け取っとけよな!
 雪だるまん中に入れておくの、苦労したんだぜ!!』

誰やねん・・・・(涙)
岳人難しいです・・・大好きなのに愛してるのになかなか書けない・・・!!うわーん。(涙)

というかこれで終わりなんですか、って感じの終わり方ですね。
えぇ、中途半端ですがこれで終わりです。
あんまり深くつっこんじゃいけません。

ってかこの雪だるまの中の指輪ネタ、
日記にもちろりと書いてたんですが某法律番組見てたらコレだ!と思いました。
でも岳人って絶対こんなロマンチストじゃないよね、うん・・・
でも良いの、もう書いちゃったもんはしょうがないから。(マテ)

それにしても岳人=雪っていう方程式があるのはあたしだけ・・・?
なんか無邪気だから、って意味なんですが。