恋愛相談室 後編
さてさて恋に悩む少年、鳳長太郎少年。
ただ今教室にて自分の重い人、少女と二人きりである。
しかも先ほど困っていた少女に鳳少年は自分のノートを貸してあげた。
そして二人はかなり良い雰囲気となっている。
こんな良いシチュエーションがこれ以上にあろうか!
「(忍足先輩は言ってたけど・・・やっぱ携帯の番号今聞いた方が良いのかな・・・
あ、でもいきなり鬱陶しいヤツなんて思われたら嫌ですし・・・!ど、どうすれば・・・!)」
「鳳くん・・・?」
「え?は、はい!」
「さっきからなんか考え込んでるみたいだったけど・・・どうかしたの?」
「あ、いえ!何でもないですよ!!!」
慌てて顔の前で両手をブンブン振る鳳少年。
「そう・・・あ、このノート、迷惑だったらごめんね・・・・?」
「ぜ、全然迷惑なんかじゃ無いッス!」
「そう?けど貸してもらいっぱなしじゃなんか悪い気がして・・・・
何か私に出来ることあったらするけど・・・・?」
そう言いながらじっと鳳少年を見るは少女。
真っ赤になって次の言葉を捜すは鳳少年。絵になる風景ですねぇ・・・・
「そんな、気にしないでください!ただ・・・・・」
「ただ・・・?」
少女に聞き返されて、一瞬うっと言葉を詰まらせる鳳少年。
彼は迷っていた。携帯番号を聞こうかどうか。
携帯番号くらいでこんなに真剣に悩むなんて、なんて純粋な少年なのでしょう!
「(忍足先輩は言ってましたよね・・・忍足先輩の言うことなんですから・・・!!
やっぱり言ってみたいと始まらないし・・・・・・あ、でも・・・・・・!!)」
そ、鳳少年が色々と思考を巡らせてるその時だった。
「あーーもうじれったいなぁ!!!」
突然ガラリと音を立てて、教室の扉が開いた。
「お、忍足先輩っ!?」
思わず目が点になる鳳少年。
一方の少女はあまりの突然の出来事に目を見開いて、ポカンとその場に立ち尽くした。
「ちょっと鳳、こっち来ぃや!」
「へ、へ・・・?」
そうして忍足少年は鳳少年を連れて一度廊下へと出ていった。
残されたは何がなんだか分からなく、動けないままその場に立って二人の背中を見送った。
「ななななんで忍足先輩がいるんですかっ!?」
ヒソヒソと鳳少年は忍足少年に尋ねた。
「お前部活の後教科書忘れた言うて教室へ戻ったきり帰って来ぃへんやんか!
せやからちょっと様子見にきてみたらめっちゃええ感じやないか!!」
忍足少年も、教室の中の少女には聞かれないようにと小声で返す。
「ほんで俺は絶対うまくいくやろ思てずっと見とったんやで!
それなのにお前、いつまで沈黙しとる気や!次は携帯番号や!分かったな!?」
興奮の余り、段々と声が大きくなる忍足少年。
「お、忍足先輩静かにしてくださいっ!さんに聞かれたら!!!」
「何言うてんねん。これから番号聞くんやからこんくらいのことで慌てとったらあかんで!」
そう言って鳳少年の肩をポンと軽く叩いた。
「ほな、頑張るんやで!」
そう言うと忍足少年は鳳少年を投げ入れるかのように教室の中へ入れた。
一瞬体勢を崩して倒れそうになる鳳少年。
彼は顔を真っ赤にして立ち上がると、少女と目を合わせた。
「・・・・・・・・」
無言で、全く意味が分からない様子で、困ったように少女は鳳少年を見ていた。
「あ、あの・・・・!!」
鳳少年は何から言えば良いのかと必死に頭の中で思考を巡らせる。
「えーっと・・・今の人は・・・その、ただのテニスの先輩で・・・
なんかテニスの話があるって言うからちょっと話してただけですから・・・えーっと・・・・」
「へ、へぇ、そうなんだ・・・・・」
少女は無理矢理な笑顔を繕って笑って見せた。
「(うっわー、どうしよう!何とかこの場の雰囲気を変えなきゃ・・・
さん、すんごいい辛そうにしてますよ!?ど、どうすれば・・・!!)」
必死に考える鳳少年。
そして彼はついに一世一代の決心をした。
「そ、そうださん!さん、携帯持ってますよね!?」
場の雰囲気を変えようと必死になったその時、無意識にも彼が発したのはこの言葉だったのだ。
「え?持ってるけど・・・・?」
「あの、もし良かったら番号教えてくださいよ!
えっと・・・その・・・・別に理由なんて無いんですけど・・・・
あ、この前面白いチェンメを先輩が送ってくれて!!さんにも見せてあげたくて!」
「くすっ、あはは・・・!!」
突然笑い出した少女に鳳少年は慌てた表情になった。
それを察したのか、少女は笑うのをこらえるようにやめて、口を開いた。
「ごめんごめん。ただ鳳くんって結構面白いとこあるんだなーって思って。
なんか授業とか見ててもすんごい真面目そうで話しにくい人かなーって思ってたの。
なんか鳳くんもチェンメとかで遊んだりするんだなーって思ったら笑えちゃって。」
そう言ってにっこりと微かに微笑んでくれる少女。
滅茶苦茶可愛い。
「そ、そうですか・・・?」
「うん、まぁね。勿論良いよ。今携帯持ってる?」
そう言うと制服の内ポケットから携帯を取り出す少女。
ちなみに氷帝学園は一応携帯は禁止。だが守ってる人はほとんどいないとか。
「は、はい。」
鳳少年も同じように携帯を取り出した。
「じゃあ言うよ。私の番号はねー・・・・」
上手くやったな鳳少年。
携帯番号も聞き出して今は最高潮じゃないか。
そしてその夜、鳳少年は自室の机に向かい、携帯をいじりながら悩んでいた。
ちなみに先ほど鳳が言ってたチェンメについては
数日前に忍足少年から回ってきた妙なモノを送ってみるつもりだった。
けど、メール一通目がチェンメというのもなんか寂しい。
やはり最初はちゃんとしたメッセージで送りたい、これが鳳少年の考えだった。
『こんばんはさん。
さんに携帯の番号教えてもらえたのが嬉しくて、早速メールしてみました。
さんと話せて嬉しいですよ。
チェンメ、良かったら今から送りましょうか?』
(こんなんで良いんだろうか・・・)
何しろ女の子にメールを送るなんてのは初めてだ。
女の子が普段どんなメールをしているのかだって分からない。
しかし悩んでいても仕方ない。
おまけに忍足少年の言った方法で、良い感じに携帯の番号を聞き出せたのだ。
やはりここも忍足少年の言った通りにするべきだろうと鳳少年は思った。
そして、送信ボタンを押したのだ。
少女からの返事はすぐに返ってきた。
携帯のメロディが鳴ると、すぐに鳳少年はその携帯のメールを見る。
『うわ〜メールありがとう
あたしも鳳くんとメール出来るなんて思ってもなかったよ。
今日はノート貸してくれてありがとすんごい助かった
チェンメ見たいなー楽しみに待ってるネ☆★』
とりあえず先ほどのメールに気を悪くしたようなことは無いようだ。
メールの内容を見る限り、随分テンションは高そうである。
鳳少年はとりあえずこの前忍足少年から来たチェンメを送ることにした。
そのチェンメの内容とは以下のようなものだった。物凄くくだらない。
『件名:Re:Re:Re:Re: 大事な話が・・・・・・・
本文:伝えておかなければならないことがあるのでメールします。
直接言おうと思ってたんだけどなかなか会う機会がないし、もう8月も終わってしまったから・・・。
いつかはこんな日が来ることを知ってたのに、しかたないですよね。短い間だったけど・・・』
※時期外れですが、9月の始め頃の設定と思ってください。
この文の一番下にアドレスがあって、それをクリックすると、こんな画像が出る。
『冷やし中華終わりました』
非常に馬鹿馬鹿しいメールだった。
忍足少年は一体どこからこんなくだらないメールを回されたのか・・・・・
鳳少年は自分でもこんなものを送って良いのかと思ったが、勇気を振り絞って送信してみた。
少女の返事は、またすぐだった。
『あっはっは〜!すんごいウケたよ〜〜
明日友達にも送ってみるね。ありがとう』
一見するとあっけないメールに見えた。しかし。
「あれ・・・・?」
メールには続きがあるようだ。
下へスクロールしていくと、そこに書いてあったのは信じられない言葉だったのだ。
『鳳くん、ここまで気付いてるかな・・・・?
私一瞬さっきのメールしてどっきりしたよ。
もしかして鳳くんどこかへ別れちゃうんじゃないかって。(笑)
鳳くんってほんと面白いし優しいよね。』
メールにはさらに続きがあった。
『鳳くんの彼女の人って楽しそう』
(え・・・・?)
そのメールを見て鳳少年は一瞬硬直した。嬉しさと驚きから。
そして、彼が次の瞬間、無意識のうちに打っていたメールはこんなものだった。
『俺、さんのことずっと好きだったんですよ。
だから・・・俺と・・・・・・・・・・』
『ほんとに?嬉しい
あたしもずっと鳳くんのこと・・・好きだったから』
そう。鳳少年の告白は見事成功。
それが忍足少年のお陰かどうかは五分五分だろう・・・・
あぁ忍足先輩!俺やりましたよ!!!!
本当に、全部忍足先輩のお陰ですよ!!
俺、本気で先輩のこと尊敬します!ありがとうございました!!!
間違っているところも多々あるようですが、めでたしなのでよしとしましょうか。
ついに完結、恋愛相談室シリーズ第1弾。
割と楽しかったんですけどね・・・・
でもやっぱ前編が一番好きだな。跡部と忍足・・・・・
ところでこの中で出てきた↑のチェンメ、見たことある人いません?
私初めて見た時爆笑だったんですけど・・・・ちょっと今は季節外れですがね。
某雑誌にも載ってましたねー・・・・
これの他に、『あゆのヌード』のチェンメもウケました。(知ってる人いませんかっ!?)
にしても長太郎の敬語萌え・・・・
また続編書きたいですねぇ・・・・(読みたくねぇ・・・)
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