罠 第4話

「今日から男子テニス部マネージャーとして働かせていただきます。ですv」
朝練見学に行った次の日、
その日も朝練の時間にコートに行った私は、そう言って深々と頭を下げた。
多くの部員は何がなんだか、という顔つきで見ていた。

「マネージャー・・・ッスか?」
裕太が不思議そうに聞き返してきた。
「そ、マネージャー。今日から宜しくね。」

「ま、待て!俺はそんなこと聞いてないぞ。」
「うっさいわね、バカ澤。もう先生に入部届出したのよ。」
「・・・・・」
私の言葉に赤澤はしゅんとしょぼくれたようだった。
ごめんね赤澤。今の私の頭の中には観月のことしかないの。


「マネージャーなら僕が足りてますが。」
やっぱり。観月は案の定つっかかってきた。
「フフン。だって腹黒い冷徹マネージャーだけじゃ部員も大変でしょうに。
 ドリンク渡したり、タオル渡したりも出来る可愛いマネージャーも必要ってもんでしょう?」
「貴方のどこが可愛いんですか。」

少し前まで毎日毎日『可愛い』を連発しまくってたくせに。ほんとムカツク。

「くすくす良いじゃない。さんがマネージャーならきっと部員のやる気も出るよ。」
「それは部員じゃなくて貴方がやる気出るんでしょう、木更津。」
「でも可愛いマネージャーも欲しいだーね!」
「それは何ですか、柳沢。僕だけでは不服だとでも?」
はしゃぐ二人に対して冷たい視線を向ける観月。

だけど今の私はそんなモノ気にしてられないの。

そして、私は半ば無理矢理テニス部のマネージャーとなった。

その日から、部員の世話を始めた。

しばらく続けていれば、そのうち観月も少しは興味を持ってくれるかと思ってた。

馬鹿みたいなのは分かってる。分かってるけど、

他にどうすれば良いのか、少なくとも今の段階では思いつかない。


しかし、転機というのは意外と早くやってくるものなのだ。

マネージャーとして働き出したその日の昼放課、
校庭からふと見上げると、屋上に人影が見えた。
これでも私は視力は良い。かなり良い。
あそこに立っているのは間違いなく・・・・・

観月

少し迷った。
だけれど、何故かは分からないけど今観月は一人でいる。
このチャンスを逃したら、もう駄目な気がした。

知りたい。
どうして冷たくするのか。
どうして急に私を避けるようになってしまったのか。
もう一度好きになってとまでは言えない。
だけどせめて理由だけでも聞きたい。

それに・・・・

私は

本当に、観月が好きになっちゃったみたいだから・・・・・




「観月。」
屋上の扉を開けた私は一人そこにいた観月の背中に向かって名前を言った。
さんですか。何の用ですか?」
相変わらず冷たい口調。
だけど諦めたくない・・・・・諦めたくないの。
聞かなきゃ・・・今聞かなきゃ駄目なんだよ・・・・・


「ねぇ観月。どうして急に冷たくなっちゃったの?私が冷たいことばっかり言ってたから?
 もしそうなら謝る・・・ごめんね・・・・私、観月のことずっとただ鬱陶しいヤツだと思ってた。
 だけど観月が来なくなったら無性に寂しくなって・・・・・」

私は顔を真っ赤にして続けた。

「もしかしたら、私も観月のこと好きになっちゃったかもしれないって・・・
 だから・・なんで私のこと嫌いになっちゃったのか、理由だけでも聞きたいの・・・・・」


「んふ」

観月の顔に笑顔が浮かんだ。

「嬉しいですよ。」

そう言ったかと思うと観月は私に歩み寄り、
後頭部を引き寄せた。そして一瞬のうちに奪われた、私の唇。

びっくりして、何がなんだか分からなかった。

「大成功でしたね。」
観月は勝ち誇った笑顔で言った。
「は??」
きっとすんごい間抜けな顔をしていたと思う、私。


「人間っていうのはね、追いかけてくるものより逃げるものを追いたくなるものなんですよ。」


さっぱり状況が分からない。
「どゆこと・・・・?」

「つまりですね、すべては僕のシナリオ通りというワケですよ。
 しばらく僕がさんから逃げてみればさんが追ってきてくれるのではないかと。」
「!!???」
私は声にならない叫びをあげた。
「んふっ、マネージャーにまでなってくれちゃって。もう100点満点ですよ。」
だからこの作戦は嫌だったんだよ!!(涙)
「じゃ、じゃあ今までのは全部演技!?」
「んふっ迫真の演技だったでしょう。
 この屋上も、貴方目良いですし、僕と二人きりになれる機会を逃すはずないと思いましたから。」
「馬鹿馬鹿!!冗談じゃないよ!前言撤回!観月なんで嫌ッ・・・・!」

そう言おうとした私の唇は観月に塞がれてしまった。
しかも今度のはさっきのように浅いキスではなく、舌を絡ませてくる深いキス。

「今更嫌だなんて言わせませんよ。告白してきたのは貴方なんですから。」
「・・・・・・/////」
「僕もさんのことが好きですよ。付き合いましょう?」
「今回だけは・・・あんたの演技の上手さに免じて、だからね。」
「んふふ。貴方はもう僕から逃げられないんですよ。覚悟してくださいね、さん・・・・」

「もうっ!!
 あ、それからその’さん’付けやめようよ、はじめ。」
私は初めて観月のことを名前で呼んだ。



「分かりましたよ、。好きですよ。」

終わった終わった〜〜!
観月さまドリ第一弾です!
あたしは策士な観月サマが好きで好きで・・・・vv
こんなヘタレドリを最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございますvv