恋愛必勝法

「あぁ麗しきさん・・・・vv
 今宵こそは僕の部屋へ・・・・・・」

結構ですよ。

授業後図書室で一人読書に浸っているのは
この聖ルドルフ学院中の生徒会長。
一部の生徒の憧れであり、
また一部の生徒がこの学校内で最も恐れる存在である。

そんな彼女の元へ今日も懲りずに寄ってくるのは、
この学校で彼女に次いで恐れられてると言っても良い、
男子テニス部マネージャー観月はじめ。


「んふっ、休み時間は図書室で読書なんて流石はさんです。
 嗚呼やはり僕が心に決めた女性というだけありますね。」
「勝手に言っててください。」
さん、今日の気温が何度か知っていますか?」
「少なくとも観月さん、貴方の登場で私の心が10度は下がりました。」
「今日の気温はたったの3度ですよ!でも僕の心はちっとも寒くありません!」
「めでたい方ですね。」
「えぇ!今日も貴方への愛が熱く燃えておりますから。」


ひゅ〜〜〜〜


場が凍りついた。


「観月さん、折角の図書室の暖かさが台無しですよ。用が無いなら出て行ってくださいよ。」
「用があるから来てるんですよ。」
「ならばさっさとその用事を済ませて
 
私の前から消えてください。

図書室にいた他の生徒はそそくさと出て行こうとしている。
ルドルフで1・2を争う腹黒の二人が争ったらえらいことだ。


だがそこへとても気まずそうにこの図書室へ足を踏み入れてくる少年が約1名。
「あの・・・先輩・・・・・・」
不二裕太。
彼はに良い意味でも悪い意味でも非常な可愛がられている少年。


「まぁ裕太くん!待ってましたよ!」
裕太が入ってくるなり彼女は今までの観月に対しての冷たい態度とは一転した喋り方で叫ぶ。
カタンと音を立てて椅子から立ち上がる辺りからも、彼女の興奮ぶりが明らかである。

そしてその様子をとても不満げに見つめる観月の姿もまた。

「(な、なんで観月さんまでっ・・・)あの、用事って何スか?」
裕太は観月に気付くと、彼の機嫌を伺うように恐る恐る聞いてjみる。


「いえ、別に用事があったわけではないですが。裕太くんに会いたかったんです。」
ニッコリと笑ってとても楽しそうに言う彼女に、裕太は何と答えれば良いのか分からない。

と、いうか・・・・・

「(
そのくらいで一々俺を呼び出すな!!!!)」
などとは言えるはずもなく・・・・・


と、言うより、先ほどから裕太を睨み付ける某テニス部マネージャーの視線が

非常に怖い!



「ところで裕太くん、赤澤さんはどこにいるか知りませんか?」
は裕太の両手を取ると突然そう問い掛けた。
「え?部長なら部室だと思いますけど・・・・・」
さんっ部長がどうかしたんですか?」
裕太の登場のお陰で無視されかけていた観月が突然叫びだす。

「いえ・・・この図書室に妙なストーカーが迷い込んできましたので、
 部長さんにちゃんと監督してくれるよう頼もうかと思いまして。」
サラリと言われてしまった。

「裕太くんのことですか?」

貴方以外に誰がいるんですか観月さん。
「あぁさん!僕の名前を『観月さん』って・・・・
 もうこの図書室にいる間だけで3回目ですね!嗚呼、良い響きですね・・・・・
 貴方もそうは思いませんか?貴方も将来この苗字になるのですよ。」

((馬鹿だこの人は・・・・))


「そんなに名前呼んでほしいのでしたら何度でも呼んであげますよ観月さん。
 だけれどたかだか苗字程度でそんなに喜んでいられるほど
 貴方が小さい方だとは思いませんでした観月さん。
 そんなことで喜ぶ暇があるのでしたら私から愛の言葉でも貰えるよう努力出来ないのでしょうかね。」

マジンガントークのようにペラペラと話し出すに裕太は唖然。
しかし観月はその言葉にうっとりと(違)聞き入っていた。

「でもさんは恥かしがり屋ですから、なかなか僕への愛を表現してくれないじゃないですか。」

無いものをどうやって表現しろってんですか。

「んふっそんなに照れなくても良いじゃないですか。」
観月に何を言っても効果なし。
「それよりさん、今度は『観月さん』じゃなくて『はじめさん』って言ってみてくださいよ!」
「それを言ったら出て行ってくれるんですか、ハジメサン。」
はやれやれとでも言うように棒読みした。
「あぁ聞きました、裕太くん!『はじめさん』なんて、なんか新婚さんみたいですね!」

「そ、そうッスね・・・・・」
裕太くん!私を裏切る気ですか!
観月の言葉に安易に頷く裕太を今度はが責める。
「(お、俺早く部活行きてぇ・・・)いや・・・俺は別に・・・・・」
顔中に冷や汗を流した裕太はもうどうすれば良いのやら分からない。

「裕太くん・・・貴方は私がこんなストーカーのところにお嫁に行くのを願っているわけですか・・・・・」
は少しシュンとなった顔をして裕太を上目遣いに見上げてきた。

そして裕太の心情↓
だ、だまされるもんか・・・!この姿に一体何人の男が犠牲になったんだ!
騙されないぞ・・・!騙されるもんか・・・・!!!
騙されるかーーー!!!!!
って・・・でも可愛い・・・・・!!!!!



君もやっぱり男なんだね、裕太。
「嗚呼・・・私は悲しいです裕太くん・・・!!今までこれだけ貴方を可愛がってきてあげたのに!」

いや・・・
『いじめてきた』の間違いッスよ!!!
と言えるはずもなく裕太は・・・・・
「そ、そんな俺は別にそんなつもりは・・・・・・」

すんげーあるけど・・・・・
っていうかむしろ俺は可愛がられてるばっかりにすんごい酷い仕打ち受けてんですけど・・・
と続けたいところだが、それは彼の心の中に封印されたようだ。


「そんなことよりさん、これから僕の部屋へご一緒に・・・・v」
「私と裕太くんの愛をそっちのけにしないでくださいよ!」
「(愛じゃないッスよ・・・・・)」

「じゃあ新しく僕とも愛を作れば良いんですよ!」
「私の裕太くんを何だと思ってるんですか!」
「(観月さん、頑張ってくださいぃ・・・・・)」

「裕太くん・・・僕らの愛作りのためにも今日のところは身を引いてくれませんかね・・・・・」
「ちょっと何勝手なこと言ってんですか観月さん。」
「(いや、俺は最初から身を出そうと思ってないッスけど・・・・)
 あのー・・・先輩・・・・観月さんもこう言ってますし、俺・・・・・」

裕太くんは私よりストーカーの方が大切だと!?
裕太くん、僕の言うことが聞けないワケではありませんね?


二人同時に詰め寄られ、裕太は大ピンチに陥った。

さぁ、どうする?
どちらを選択しても、明日の太陽が拝める保障は無さそうだぞ。
ならば少しでも自分の得となる方を選べば良い。
観月に味方しておけば、とりあえずここから逃げられるという利点もついてくる。

と、いうわけで・・・・


「あ、お、俺部活行かなくてはっ・・・・・!!」
さようなら裕太。彼の命が明日まで生きていることを願おう。

「観月さん・・・・見事に邪魔してくれましたね・・・・」
裕太の後姿を見て、はとても不機嫌そうに観月に言った。
そして再び椅子に座ると、読みかけだった本を読み始めた。
「んふっこれでまた僕らの愛の世界が生まれるんじゃないですか。」
「冗談じゃないですよ。」

「ところで・・・先ほどから読んでいるその本、ずっと気になっていたのですが・・・・」
「あぁコレですか?読みたいですか?」
「えぇとても・・・・」
「なら後でお貸ししますよ。まぁ貴方がこれを読んだところで、
 実行に移せるほどの能力は無いと思いますから。」
「んふっ僕を誰だと思っていらっしゃるのですか。
 僕はそんな本読まなくても自信はありますが、念には念を、ですよ。」
「いくら念を入れても叶わないモノがあることを知ってみると良いですよ。」



彼女が読んでいた本というのは・・・・・

『恋愛必勝法(改)』
【待望の『恋愛必勝法』シリーズ第2弾ついに登場!
 この本一冊あれば叶わない恋はない!貴方のお供に是非一冊!】

ってかコレは一体・・・
しかもオチがなくて意味不明な展開・・・そして無駄に長い。最低だ・・・・
観月ドリームなんだか裕太ドリなんだか・・・・
裕太ドリではなさそうだ・・・でもVSでも無さそうだ・・・・
というわけで観月ドリになりました。

最近アキラちゃんがこのサイトを『不二色に染めてやる!』って言ってるので
「冗談じゃねー!ウチは観月サイトだーー!!」
ってワケで久々に観月を更新。(死)

一応ヒロインとかの設定は『波乱のSt.Christmas』と同じつもりで書いてます。

にしても『恋愛必勝法』って・・・欲しい・・・(真剣)