小さな勇気を振り絞って
「ゆうたく〜んVv」
うわ・・・今日も来やがったこの女・・・・
「・・・・・・・・」
「裕太!返事は?」
強い口調で彼女が俺に向かって言った。
「・・・・はい・・・・・」
俺は気のない口調でこたえる。
「よーしっ!んじゃ早速だけど昨日の宿題み・せ・てvv」
「なっ・・・宿題は自分でやるモノっすよ!!」
「ふーん・・・裕太、私に歯向かうんだ・・・・・」
どす黒いオーラを飛ばして俺を脅迫してきやがる。
「へ?あ、いやいや・・・・」
「ん〜昨日師匠のとこ行ってて忘れちゃってたんだもん!」
「でそれが俺と何の関係があるんスか・・・・・」
「まさか私のお願い断ろうってつもりじゃないわよね、不二裕太くん?」
「も、勿論断りませんとも・・・・」
黒い笑顔でにっこりと微笑みながら言われて、
俺はその笑顔のあまりの恐ろしさに思わず彼女にノートを手渡した。
「ありがと〜〜Vvさっすが私の裕太くんだわ♪」
そう言うとにこにこと笑いながら
彼女はそのノートを自分の席へと持って行ってしまった。
はぁ・・・・俺は何でルドルフに来てしまったんだろう・・・・
観月さんたちテニス部員はすっげー良い人たちっすよ!
特に観月さんのこと俺すっげー尊敬してますもん!
でもさ、このクラスメート、だけはどうにかしてほしいんすよ・・・
あいつと会って以来俺の人生下僕生活ッス・・・・
兄貴並っすよ、あの女は・・・
そう、それもそのはずっすよね・・・だって、兄貴の弟子なんだから・・・!
そうだよ、だからさっき言ってた師匠ってのは兄貴のことなんです。
本当に、数ヶ月前、俺がここに来て以来、俺の下僕生活は始まった・・・・
「青春学園から転校してきました。不二裕太と言います。皆さんよろしく。」
その挨拶から、俺の下僕生活は幕を開けた。
俺は挨拶を済ませた後、先生に指定された席に着いた。
「あ、私よ。よろしくね。」
そう言って隣に座っていた彼女はにっこりと俺に挨拶してくれたんです。
はっきり言って滅茶苦茶可愛くて・・・・
彼女の第一印象は美人だなーって・・・・
でもこれが不幸の始まりッスから・・・
「こ、こちらこそよろしく!」
俺は少し赤くなりながら挨拶した。
そして授業が終わった1時間目放課のことだった。
「やっばー!」
「どうしたの?」
「国語の教科書昨日塾のカバンに入れてそのまま忘れて来ちゃった!」
「マジでー?どうすんの?」
「う〜ん・・・・」
とその友達の会話。
は少し考えるとそうだ!という感じで俺の方を見てきた。
「ねぇ裕太。」
「へ?」
いきなり呼び捨て・・・?
ちょっと嬉しい・・・なんて思ったりしたけど・・・
この女の正体は悪魔なんだから・・・
「国語の教科書見せてよ。」
「え、お、俺がッスか!?」
「逆らう?」
「へ・・?あ、いやそういうわけじゃないッスけど・・・・」
今日会ったばっかの相手に対してそんなこと言うかなーと思ったのだ。
するとはにっこりと笑った。
その黒い美しい笑顔に、一瞬だが俺も見とれてしまったほどだ。
そう、次の一言を聞くまでは・・・・
「私、不二周助くんと仲いいのよ。」
「え・・・?」
「あんた、師匠の弟でしょ?」
「し、師匠・・・・?」
「そうよ!私に逆らったら・・・クスッ・・・・・」
背中がゾクッとした。この笑いは殺される!
俺の長年の(兄貴の)経験がそう言った。
「わ、分かりました。」
「クスッ・・・これからもよろしくね、裕太くん・・・・」
何をどうよろしくするんだよ・・・・
そしてこの時以来、俺はの下僕となったのだ・・・・・
更に運が悪かったのは何とが男テニマネをやっていたということだ。
によれば少しでも兄貴に近づくため、
そして第2の師匠の観月さんに弟子入りするのを目標としているから・・・
だとか・・・・
何だよその不純な動機は。こっちは真剣にテニスやってるっつーのに。
つまり、俺の地獄は部活の時間までも続くのだ。
しかも俺たちがスクールに行く日・・・部の方に行ってれば良いのに
わざわざスクールの方へ来るんだよ・・・お前本当にマネージャーか?
「レギュラー10分休憩ですー!」
がいつものようにマネージャーの仕事をしている。
「ハイ、お疲れ様です。」
にっこりと笑って部員たちにドリンクを渡している。
今日は俺たちスクールの人間も部活にいる日で、
観月を師匠だと思ってるはいつにも増して気合が入ってる。
「師匠もどうぞVv」
「んふっ師匠じゃなくてはじめと呼んで欲しいのですがvv
将来同じ屋根の下に暮らす時にはそう呼ぶでしょうからvv」
「えー!私は観月くんを師匠にしたいんだもんー!」
意味分かんねぇよお前・・・・
「はどういう子が好みなんだーね?」
「えー?ん〜〜〜っと・・・・」
そんなに真剣に考え込むなよ・・・・と思っていたが、
俺の考えは大はずれだ。
「あ、そうだ!!」
「「「「「誰誰?」」」」」
部員一同どきどきしている。
みんなの外見にだまされてるな。可愛そうに。
「裕太ー!ジュース買って来てよ!」
「はい?」
いや好みの話で悩んでたんじゃないのかよ。
ほら、ドキドキしていた観月さん達もがっくりしてるぜ?
「ほら、近くに自動販売機あるでしょ?
のど渇いたからジュース買ってきて。部員分ね。」
「そ、そんな・・・今部活中ッスよ!!」
「部活だからのど渇いてジュースが要るんでしょうが!
ほら、行ってきてよ!」
冗談じゃないぜ・・・・俺はパシリかよ・・・・・
「そ、それってマネージャーの仕事じゃ・・・・」
「行ってきてくれるよね?」
「はい。行かせていただきます・・・。」
俺は肩を落として自動販売機のある場所へと歩き始めた。
本当に俺はこれで良いのか?
兄貴を越えるために、
今までの自分より強くなるためにこのルドルフに入ったのに・・・
兄貴の弟子と名乗る女に良いように扱われて・・・・
こんな下僕みたいな生活送ってて・・・・こんなんで良いのかよ不二裕太!
その時、俺の中に小さな勇気と共に決意が芽生えた。
そうだ、いつまで俺はの下僕になっているんだ!
兄貴が何だよ、が何だよ!俺だって男だぜ!!
もう我慢出来るかよ・・・!!
俺は自動販売機へと向かっていた足取りを反対方向へと向かわせた。
に一歩一歩と近づく。
そして、勇気を振り絞ってに向かってでかい声で言った。
「っ!!」
「何?」
「うっ・・・・」
その黒い表情に一瞬引いてしまったが、
ここで諦めたら男じゃないぞ、裕太!
「も、もう俺はの下僕になってるのはまっぴらだぞ!
いい加減にしろ!!」
い、言えた・・・!!これで俺は自由だぞ!!
の下僕じゃなくて良くなる・・・・
「裕太・・・・・」
は勿論のこと、
周りに居た部員たちも驚いて声が出ない様子だった。
「もう俺を使おうなんて思うなよ!!」
俺は留めを指したつもりだった。自分でも決まった!と思った。
「裕太・・・」
だがは今にも泣き出しそうな表情で俺を見てくるのだ。
げっ・・・泣くなよ・・・!?頼むから泣くなよ・・・!?
「裕太ったら・・・・・・」
の目には涙が潤んでる。
「あーー、っ!な、泣くなよ!!今のはその・・・!」
と俺が必死にフォロー(?)しようとした時だった。
「裕太っVv!!」
は俺に抱きついてきた。一瞬目が点になってしまった。
そしてその後、からすごい言葉が出たのだった。
「裕太・・!私に歯向かうなんて・・・!!
大人になったわね!
私は嬉しいよ、裕太!
これからも貴方には下僕として働いてもらうからね!!」
「はい?」
感涙に目を潤ませて俺に抱きついてくるこの可愛い悪魔・・・・
俺の下僕生活は当分終わりそうにない。
END
初裕太!!
しかしこれをドリームと呼べるのだろうか・・・・
最近忙しくてなかなか思うようにドリーム書けなかったのですが、
この作品、結構気に入ってます。
っていうかヒロイン黒いのがやっぱり・・・・Vv(またか;)
それにしてもやっぱりいじめられる裕太くん・・・可哀想に。(笑)
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