お義兄さん

「あの。テニスコート、どちらでしょうか?」


青春学園中等部運動場。一人の少女がその場にいた男子を一人捕まえて聞く。


「テニスコートならあっちですけど・・・?」
「そうですか。ありがとう。」
そう言ってニッコリと笑う。

天使の微笑みとも言おうか。
ただどことなく黒いオーラを放っているように見えなくもない。


「あの・・・青学(ここ)の制服じゃないですけど・・・・他校の人ですか?」
尋ねられた少年は、
このまま別れるのは勿体無いと思ったらしい。とりあえず質問してみる。

「えぇ、まぁね。今日はちょっと会ってみたい人がいたので。
 テニスコートの場所教えてくれて有難うね。それじゃ。」

それだけ言うと走ってコートの方へと向かって行った。



そしてその頃男テニコート。

「キャーーーVvリョーマさまぁーーVv」
リョーマ様ファンクラブ会長小坂田朋香は今日も応援に励んでいた。

「リョーマくんってあの子ですか?」
先ほどの少女だった。

「ま、まさかまたリョーマ様のストーカー!?
 リョーマ様への話は私を通してもらわないと駄目よ!!!?」
「は、はぁ・・・・。」

(そんなことよりあの子がリョーマかって聞きたいんだけど・・・・。
 ま、いっか。要するにあの子が噂の越前くんなわけね。)

少女の顔がニヤリと笑う。
恐ろしいと言えば恐ろしいのだが、美しいのは否定しようがない。

少女はしばらくリョーマの練習風景を見ている。

横にいる朋香はちらちらと横目で彼女の様子を気にしている。
だが彼女はそんなものまったく気にとめる様子もなく、じっとリョーマの練習を観察する。



「なるほどねー・・・あれで1年かぁ・・・騒がれるだけのことあるわね。」
不意に少女が呟いた。


「ちょっと!あなた一体何者なの!!いきなり現れてリョーマ様をじっと見て!!」
「え?私?私は中学2年の。呼ぶ時はで良いよ。」
簡単に自己紹介。

そんな今にも火花の散りそうな(?)会話の最中、部活の練習が一段落したらしい。
越前リョーマはコートから出てきた。



「リョーマ様ぁ〜〜Vv最っ高でした!!」
真っ先に駆け寄るのは当然というか朋香ちゃん。

だがあぁ、と一言だけ言ってリョーマはの存在に気付く。
は試合の終わってコートから出てきたリョーマをまだじっと見ている。

そして額に手を当て何かを考えているようだった。
その視線に少し赤くなりながらリョーマが言う。


「誰・・・・?」
「あなたすごいわねー。噂には聞いてたけど思ってた以上だったわ。」

「だから誰・・・・?」
「兄たちから色々話を聞いてて是非一度見てみたいと思ったのでね。
 ふふっ・・一度で良いからいつか是非ともお手合わせ願いたいわね・・・・。」


は少しばかり黒を含んだオーラをまといにこりと笑う。
このオーラ、どこかで見たことがある、とリョーマは思った。

そう考えると彼女の美しい顔も見覚えがあるような気がしなくもない。
そう、可愛いというよりは「美人」の部類に入るだろう。
どこかで会ったことがある気がする。


しかし思い出せない。


そんな思考を巡り合わせたが、とりあえずの言葉に返事をする。

「いつかと言わずに今から打とうか?」
どこかで聞いたことある気がするセリフです。
もしかしてリョーマ君ヒカ○の碁のファンでしょうか?(違)


「ふふっ・・あなた確かに強いけど、あたしに勝つのはまだ早いと思うわよ?」

はまたあの黒っぽい笑顔で言う。しかもかなり自信満々に。

「そう?あー楽しみ。」
リョーマも負けずにニヤと笑う。

「生意気な一年生ね・・・ふふっ・・ま、そういう子好きだけどv」
そう言って持っていた大きなカバンからラケットを取り出した。

「私の方はいつだって勝負は受けて立つわよ。いつやるの?」
そう言いながらラケットを手でくるりと器用に回す。

「今からやろうか?あっちのコート空いてるから。」
そう言って空いたコートを指差す。

「ふふっ。かまわないわよ。でも良いの?一応部活中でしょ?」
そう言うが早いか遠くからあの部長の声が響いてきた。



「越前!何をしている!グラウンド10周だぞ。」
「ぶ、部長!!い、今行くッスよ!!」
リョーマは慌てて走って行く。2〜3メートル離れたところで振り返ってに向かって言う。

「部活終わってからやろ。それまで帰らないでよ。」
「良いわよ。」

それだけ言うとリョーマはコートへと走って行った。




そしてお約束の部活終了後。

「うにゃ〜終わった終わったぁ〜〜!」
「今日も疲れたね・・・。」
そう言いながらレギュラー陣は部室へと行く。

リョーマだけは着替えずにコートに残って、コートの外で見ていたを手招きする。
はニコリと笑うとラケットを持ってテニスコートへ入る。

「じゃ、約束通りやろうか?」
ラケットを構えてやる気満々でリョーマが言う。

「良いけどあなた、部活の後でヘトヘトじゃない。大丈夫なわけ?」
「アンタはアンタで制服なんかで動きにくいでしょ?お互い様じゃん。」
「ふふっ・・あなたとやるだけならこれで充分よ。」
「じゃあ俺も。アンタを倒すだけなら今でも充分倒せるから。」
「生意気ねぇ・・・じゃ、始めましょうか。」

そう言ってはベースラインまで下がる。

「サーブはあげるから。」
リョーマもベースラインまで下がりながらボールを一つ、の方へ投げて言う。

「あら随分余裕ね。じゃあお言葉にあまえさせていただこうかしら。」
そう言ってラケットを構えてトスを上げる。そのまま落ちてくるボールを叩く。


「ふふっv」



「・・・・・。」



「今のボール・・・・。」
そう、その細身の体から打たれたとは思えないスピードだ。

「なんかあたしのことやけに馬鹿にしてるみたいね?
 本気でやってくれる?’左利きの越前リョーマ’くん。」
「・・・・やるじゃん・・・・・。」


そう言うとリョーマは左手に持ち替える。


「結構強いね。名前は?」
「私に勝ったら教えてあげるわ。」

「なぁんだ・・・そんなことで良いのか。」
挑発するリョーマ

「ふふっ。まだまだ・・・・。」
不敵に笑う

そう呟きながらが再びトスを上げようとしたその時だった。



。もうやめなさい。」
その声にびくっとしては一瞬手を止める。


上にあがったボールはそのまま地面に落下する。
「お兄ちゃん・・・・。」
「!!!??」
リョーマは声にならない叫びをあげた。

そう、そこに立っていたのはあの聖ルドルフ学院中の観月はじめだったのだ。
しかもさっきのの言葉・・・・『お兄ちゃん』・・・・!!?

、知らない人と勝手に試合をしてはいけないといつも言っているでしょう?」
そう言いながら観月はちらりとリョーマの方を見る。

リョーマは声を出せずにその場に立ち尽くしていた。

「だって!お兄ちゃんも裕太くんも越前リョーマくんの噂よくしてたじゃん!
 だから一度試合してみたかったんだもん!!」



その時、リョーマの中で全てのパズルのピースが繋がったような気がした。


そう。あの見覚えある美しい顔はまさしく観月はじめそっくりの物。
そしてあの自信満々な態度とかうっすらと笑顔に滲む黒いオーラとか。
全てが観月はじめそっくりだった。

リョーマがそんな風に考えていると観月はコートへ入ってきての肩に手を置く。


「さ、帰りますよ、。」
「えぇーー!!折角良い所だったのにぃ!」

は頬を膨らませて無邪気に言った。
あの美人な大人びた顔がいつもよりずっと子供っぽく見えた。

「変なヤツと付き合ってはいけませんよ。」
「試合してただけじゃん!!」
「駄目です。」

そんな風にはたから見れば馬鹿ップルのような会話をしながら帰ろうとする。
だがははっと思い出したように振り向いてリョーマに向かって叫ぶ。



「越前くん!そういえば私、自己紹介まだだったわよねー!」
と観月の姿を唖然として見つめていたリョーマははっと我に返る。

「あ、あぁ・・・。」
突然言われたので少し驚いて小さく返事する。

「私、聖ルドルフ学院中2年・女子テニス部の観月よ。よろしくねーv」
笑顔でそう言う

「あ、うん・・・・。」
だが、そんな微笑ましい新しいカップルの誕生とも言える
自己紹介シーンをただならぬ黒いオーラで見守る観月はじめ氏。


。僕は少し用事を思い出してしまいました。先に寮に帰っていてください。」
「え?用事?もう6時半だよ。お兄ちゃん、早く帰ってきてね。」
そう言いながらにっこりと微笑んでは手を振って走っていきました。

(あぁ可愛い。さすがは僕の妹ですね。)

そんな風に思いながらが見えなくなるまで
走って行ったのを確認するとリョーマの方へと近寄ってきた。

「んふっ。これ以上に近づけさせませんよ。」
思いっきり黒いオーラを放ってリョーマに向かって観月が言った。

「さぁね。」
「んふっ・・僕がいる限り、これ以上一歩もに近付けさせません。」


「まだまだだね・・・・お義兄さん・・・。」


リョーマはニヤリと笑って観月を挑発します。


果たしてリョーマは観月をお義兄さんと呼べるようになるでしょうか。


続く。


やっぱり私は何かしらで観月を出さなきゃ気が済まないようです。
っつか続きます。そのうち続編書きます。でも一旦一段落です。
続きはいつになるか分かりませんが。