魔法

今日も越前リョーマはいつもの道で家へと帰った。

「ただいま。」

ドアをガラリと開けて棒読みの声で言った。


「おかえりなさい。」
台所の方からする声はお母さんのもの。
靴を脱ぐと、そのまま居間へと入っていって腰をおろした。



「そういえばね、リョーマ、」
リョーマの母が台所で夕食の支度をしながら突然話し始めた。

「何?」
「お隣のさんちのちゃん、今日熱で小学校休んじゃったんだって。」

「熱?あのが?」
「そうよ。それで随分苦しんでるみたいだから明日お見舞いに行ってきてあげなさい。」

「なんで俺が。」
「明日学校休みでしょうが。どうせ昼まで寝てるんだから行ってきてあげなさい。」
「・・・・・・・」

リョーマくん、もっともなこと言われて言い返す言葉なし。



先ほど話題に上がったとはリョーマくんのお隣の家にすむ、
リョーマより一つ下で小学校6年生の女の子。

リョーマとは小さい頃からの幼馴染で、そこそこ可愛いらしい。
いつも元気ではしゃぎ回るが熱を出すなんてすごく珍しいことだった。
リョーマとしてはお見舞いに行ってあげたいのは山々だが、なんとなく照れくさい。


いくら幼馴染で仲が良いとはいえ、やっぱり女の子の家にお見舞いなんて・・・・


「とにかく、明日行ってきなさいよ。」



母親に無理やり丸め込まれた(?)リョーマは結局次の日、
のお見舞いに行くことになった。

「じゃあリョーマ、コレ、持って行ってあげなさい。」
そう言ってリョーマの母はリョーマに花を手渡した。

「いらないよ、別に。」
「何言ってるの。お見舞いに行くんだからお花くらい持って行ってあげなさい。」
「めんどくさいね・・・・」
そう呟くとリョーマは花を持って扉を開けた。

「いってらっしゃい。」



リョーマは家を出るとすぐ隣の家のドアをノックする。

トントン


「は・・い・・・?どな・・たです・・・か・・・?」
中から小さな、かすれた声がする。の声だ。

どうやら熱を出したというのは嘘ではないらしい。(嘘ついてどうすんだよ;)

「俺。」
リョーマは軽く答えた。

「リョーマ・・く・・ん・・・・?」
そう言ったかと思うと、はそっと扉を開けた。
「なん・・で・・・?どう・・したの・・・?」

潤ませた目でリョーマを見上げながらパジャマ姿で出てきた。

「(可愛い・・・)見舞い。あっ、コレ、母さんから。」
そう言うとリョーマはその場で持っていた花束をに差し出した。

「お・・み・・まい・・?ありがと・・・・」
無理矢理に作ったような笑顔ではニコッと笑った。すごく可愛く。

「っていうか、起きてて大丈夫なの?」
苦しそうに立っているにリョーマが言った。
「な、何・・言ってんのよ・・・。
 リョー・マくんが来・・たから・・起き・・てきた・・んじゃない・・・・」

「あっ、起こしちゃったの?ごめん。」
「ううん・・平気・・・だ・・から・・・・」
かなり辛そうだ。

「大丈夫なの?ベッド、入って来たら?」
「う・・ん・・・そうし・・ようかな・・・・」
そう言ってよろけた足で家の奥へと入って行こうとする。


その姿があまりに弱弱しくて、可愛くて、
リョーマは思わず玄関を上がって部屋に上がると、
のそばまで歩いて行った。

「何・・?まだ何・・か・・あ・・るの・・・?」
が突然自分の家へ上がりこんできたリョーマを見上げて言った。


「だってその体じゃ、途中で倒れるよ、部屋に行くまでに。連れてってあげるから。」


そう言うとの背中をひざを支えてスッと持ち上げた。いわゆるお姫様だっこ状態。

「ふえ・・!?ちょっ・・何・・す・・んの・・・!?」
の身長は140前後くらい。
身長の低いリョーマの腕の中でもスッポリと収まってしまうくらい小さい。

だが、突然抱き上げられてびっくりしない女の子なんていないだろう。
は顔を真っ赤にして手足をバタバタさせてみる。

「暴れないでよ。さっさと部屋行きたいでしょ。」
そう言うとを抱えたままリョーマはの部屋へと歩いて行った。

は照れながら下ろして!と言うが、
小さな、しかも風邪ひきの女の子の抵抗なんてなんでもなかった。



の部屋まで来ると、リョーマはベッドの上に、を寝かせた。

「ふえ・・・リョーマ・・く・・ん・・・・!びっ・・くりし・・ちゃったよ・・・」
「だって、すっごい歩きにくそうだったし。楽だったでしょ?」
「だ、だ・・ってぇ・・・・」
そう言うとリョーマはの額に手を押し当てた。

「きゃっ・・な・・に・・・?」
「熱、高いね。顔も赤いし。」

「顔・・が赤いの・・・は・・・熱のせ・・・・いじゃ・・ないもん・・・・」
「そうなの?」



「あっ、リョ、リョー・・マくん・・・・あ、・・あり・・がと・・ね・・・・」
「早く直した方が良いよ。」

「うん・・・そう・・・する・・・・・」
布団に半分隠れたの顔は熱のせいだけじゃなくて、顔が真っ赤だった。

「あっ、そうそう。早く直るにはさ。」


ちゅ


「!!?(///)」

リョーマはの真っ赤になった頬に軽く口付けた。

「早く直ると良いよね。」
「な、な・・に・・?い・・ま・・・の・・・・・・」
真っ赤になってキスされたとこを抑えながらが言った。

「魔法。早く直るように。」
「ま・・ほ・・う・・・?」
「そ。魔法。早く直るよ、きっと。」
「うん・・・あ・・・・りが・・と・・・・・・」
そう言ってはニコッと笑うとそのまま寝付いてしまった。

念のために言っておくと永眠じゃないです。(ぉぃ




その翌日

トントン

はリョーマの家の扉をノックした。

「はーい」
そういう声とともにドアをガラリと開けて出てきたのはリョーマの母。

「あらちゃん。もう熱は下がったの?」
「はい、おかげさまでvもうすっかり元気です。リョーマくんのおかげですよ。
 お礼を言おうと思ったんですけど・・・リョーマくんいませんか?」
リョーマの母を見上げながらにっこりと微笑む。


「うん・・それがね・・・・・」



「えぇっ・・・!?リョーマくんも熱ぅっ!?」
「そうなのよ〜」
「わ、私が移しちゃったのかな・・・・・どうしよう・・・・・」
「大丈夫よ、気にしないで、ちゃん。」
「う・・・・・」


あっ・・・そうだ・・・・・・!!


今度は私が

早く直る魔法

かけてあげようかな。


「リョーマくんのお母さん、私、お見舞いして行っても良いですか?」


END


ある方とお話してた時に聞いたのですが、リョーマのお話ってほとんどが年上ですよね。
ってことで年下で書いてみたりVv
そして、な、なんと!!私には珍しくギャグじゃない!!!(ヲイ)
ほのぼのリョーマ。そして早く直るようにおまじないv
それにしてもリョーマのお姫様だっこだよ・・・!
想像しただけで涙出てくるね、うん!!