5月のスケジュール
「ねぇ・・・誰に気があるんだと思う・・・?」
最近は毎日のようにテニス部を見に来てる少女がいる。
彼女は誰が目的なのかは分からないが、
授業が終わるとちょっと恥ずかしそうに顔を赤くしながらテニスコートにやってきて、
部活が終わるまでの間、にっこりと微笑みながらずっと練習を見ている。
「俺に決まってるじゃん!」
「桃先輩何言ってるんスか?やっぱ俺っしょ?」
「越前くん、1年生であんまり生意気なこと言ってるんじゃないよ?(にこ)」
「やっぱ俺にゃ〜〜Vv」
そんな日々の続いたある日、5月10日のこと。
海堂薫、ある場所で1冊の生徒手帳を拾うことになる。
(生徒手帳・・・誰かの落し物か・・・)
そう思いながら廊下に落ちている手帳を拾い上げる。
『2年4組 』
名前の欄にはそう書いてある。
(・・・・?あぁ、最近部活をよく見に来てるやつか・・・・)
話したことはそんなに多いわけではないし、仲が良いわけではない。
ただ毎日テニス部に来ているから名前だけは知っているという感じだ。
いつもは女の子のことに興味なんてない。
だが、なんとなくあの子のことが気になってるのは否定しようがなかった。
いつもはその性格のせいであまり話せない、近寄れない。
きっと彼女はテニス部の誰かに気があるのだろうという話があったが、
それだってまさか自分だなんてとても思えなかった。
手帳を落とすヤツが悪い、と思い中身を見てみたくなった。
だが、人の手帳を見るなんてどういうことだ・・・?
はっきり言って最低の人間のすることだ。
そう思うと、手帳を開きかけていた手を止める。
そうしてそのままそれを持って4組の教室へ向かおうとした。
だがその時、うっかり手帳を落としてしまう。手が滑って。
パサッ
その生徒手帳は床に落ちるとあるページを広げた。
5月の予定のページ
『5月11日 海堂薫くんの誕生日』
(!!??)
たまたま開いたページに、スケジュールの欄に自分の誕生日が書いてある。
(なんでコイツが俺の誕生日なんか書いてるんだよ・・・・!!?)
なんとなく、内心少しうれしかった。
もしかしたら可能性はあるのかも、と。
でも、ひょっとしたらテニス部員の誕生日は全員書いてあるのかもしれない。
それがたまたま5月のページを見たものだから、
たまたま自分の誕生日が書いてあるのが見えただけで。
そう思うと海堂はパラパラとページを向かって、
6月、7月、8月と全てのページを見ていた。
だがそこに書かれているのは『○○ちゃん誕生日』や、
『○○と買い物』というような女友達の名前ばかり。
不二や、リョーマの名前などまったく記されてなかった。
(なんで俺の誕生日だけ・・・・・?)
期待しても良いのか、と思えた。
だがそんな時、
「ねぇ、海堂・・・!」
突然背後から話し掛けられたのでびくりとして振り向いた。
「あの・・・この辺で・・・・」
ちょっと恥ずかしそうに、慌てた様子で話す。
海堂は自分の持っていた彼女の生徒手帳を後ろ手に隠すようにして振り返った。
「この辺で、生徒手帳、拾わなかった・・・・?」
そう言って自分の周りの廊下を不安げにキョロキョロと見渡す。
「あ・・・・・」
海堂も少し顔を赤めて口を開いた。
別に何をしてるわけでもないのだが、なんとなく緊張した。
「これのことか・・・・?」
そう言って海堂は後ろ手に持っていた手帳をそっとに差し出した。
「あ・・!そ、それ!!」
そう叫ぶとはひったくるように慌てて海堂の手から生徒手帳を取り上げた。
「な、中身・・・見てないわよね・・・!?」
慌てて何かを隠すようには言った。
海堂はなぜ自分の誕生日を知っていたか、
そしてなぜそれをスケジュールに記しているのかを聞きたくてたまらなかった。
コレはどういう意味なのかって。
だが、それを聞けば、中身を見たことがバレてしまう。
そうなったらきっと怒られるだろう。
別にが怖いわけじゃないのだが、怒らせたくはなかった。
「今拾ったばっかだよ・・誰がんなもん見るかよ・・・・」
「良かった・・・。」
ほっと安心したように息をついた。
「見られてまずいもんでもあんのかよ?」
「人の手帳見るなんて非常識でしょ!じゃ、とりあえず拾ってくれてありがとう。」
かすかに顔を赤く染めている。
何が言いたかったのか全く分からない。
だがどうすれば良いかも分からなかったのでとりあえず歩いていくを見送ると
自分の教室へと戻って行った。
(どういうつもりなんだよ、あいつ・・・)
なんとなく気になって仕方がない。
に聞いてみるか・・・?なんで誕生日知ってるんだって・・・・・。
(でもあいつに話し掛けようもんなら不二先輩に何されるか・・・・)
とまぁ、考えるだけで鳥肌が立ってくる。
結局聞けないまま、その日は過ぎて行った。
「ねぇ、今日はちゃん来てなくない?」
5月11日、毎日テニス部に通い続けていたは今日は来ていない。
不二は辺りを見回しながら言った。
「風邪でもひいたんスかね?」
「いや、なら今日もちゃんと学校来てたぜ?
でもなんか今日は授業終わると即効に走って帰って行くとこ見たんだ。」
桃城が言った。
「何か用事でもあったんだね、きっと。残念。」
「海堂、誕生日おめでとう。」
背後から突然現れたのは乾だった。
「乾先輩・・・どーもッス・・・・」
「あぁ、そういえば今日海堂先輩の誕生日だったんスね・・・」
「そういえばは酷いだろ、越前」
人のこと言えるんスか、桃先輩。
と突っ込みたい越前だったが、海堂が怖いのであえて言わない。
「フシュー・・・・」
ギロリと二人をにらみ付ける海堂
「残念だったね、海堂。今日に限ってちゃんが来てないなんて、
祝ってもらえないね。」
そう言ってニヤリと笑う。うっわー!すっげー嫌味!!
「今日は海堂の誕生祝いに乾特性のスペシャルドリンクを用意しておいたよ。
みんなで飲もう。」
そう言うと何やら得体の知れない液体をカバンから取り出す乾
その様子を部員たちはゴクリと息を呑んで見ていた。
「じゃあ海堂、やはり最初は主役からだろう。ひとつ味見をどうだ?」
「結構ッス・・・・」
海堂は額に青筋が入った。ゾーッと寒気がする。
「そう言わずに飲め、お前のために作った。」
逆光モード乾その液体を差し出す。
「美味しそうだよ、海堂。乾、僕も貰って良い?」
「その前に海堂が飲んでからだ。こういう場合主役が先だろう?」
「うわー、楽しみだなぁ・・・そういうことだから海堂、早く飲みなよ。」
「いや、俺いらないッスから・・・・」
「僕のいうことが聞けないの?」
出た!大魔王・不二のエンジェルスマイル!!
それに呼応するように乾はその液体を差し出す。
「ちっ・・・・(飲み干す)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
うっ・・・・・・・・・・・・・!!」
海堂はその場に倒れそうだった。
そして一目散に水のみ場へと向かった。
(意識が・・・ねぇ・・・・・)
半分死んでいる状態で、水のみ場の前で寝転がる海堂
(誰か・・・いるのか・・・・・?)
誰かの気配がする。自分を誰かが覗き込んでいる・・・?
でも一体誰が・・・・・?
海堂はそっと目を開けてみた。
「あ、目覚めた。」
(目覚めた・・・?『気がついた』とかならまだしも『目覚めた』って何だよ・・・)
「大丈夫、海堂?」
「何してんだよ・・・・」
起き上がってちょっと刺っぽい声だったかもしれない。
「海堂を待ってた。」
「は・・?」
「誕生日、おめでとう・・・・v」
顔を赤めて照れくさそうに言いながら小さな包みを海堂に渡す。
「・・・・・・」
「今日、誕生日なんでしょ・・・?
海堂が部活終わるまで待ってて帰る時渡そうと思ってたんだけど、
校門で待ってたら海堂がここへ走ってくるのが見えたから。」
エヘヘと照れ笑いしながら言った。そしてその後に、
「あっ、誕生日、友達から聞いたんだ!勝手に聞き出しちゃった!」
「知ってる・・・・」
「は?なんで知ってんの!!?」
は驚いたように言った。
そして海堂はの胸ポケットにしまってある生徒手帳を指差した。
「あっ・・・・」
はハッとして答える。
「でも、ちょっと待ってよ!見てないって言ってたじゃん!!」
が顔を赤くして言う。
「落とすのが悪いんだ、ボケが・・・。」
「ボ、ボケ・・・!?ひっどーい!私は海堂のこと好きなのに〜!!」
「は・・・?」
あまりにさらりと言うに一瞬唖然とする。
「好きでもないやつのためにこの金欠事態の時にプレゼントなんかあげないよ・・・?」
「・・・・・・・。」
「結構悩んだんだよー!でもやっぱ海堂にはコレしかない!って思った!」
「開けても良いか?」
「・・・うん・・・・・」
の顔がポッと桃色になる。
「バンダナ・・・・?」
「だって海堂、バンダナ集めにハマってるんでしょ?」
「誰から聞いたんだよ・・・・」
「友達友達!気に入ってくれたかな・・・・?」
「・・・・・・・・。」
海堂は何も言わずに今つけているバンダナの結び目をほどいた。
そしてその今までつけていたバンダナをカバンにしまうと、
先ほどから貰ったバンダナを頭につけた。
「ったく・・・勝手に人のこと詮索したりすんな・・・・・」
END
海堂くん、お誕生日記念です。
またしてもバンダナネタ・・・・・・(汗)
そして今回ヒロインの設定がイマイチ定まってません;;
でもやっぱり海堂に誕生日プレゼントあげるなら、バンダナねー・・・・v
|