憧れのヒト

「誰でもそういう時期があるもんなんだよ!」
「年上の人に憧れる時期だよ!」

部活でランニング中、菊丸先輩たちがこんなこと話してるのを聞いた。
なんでも河村先輩に年上の彼女がいるとかいないとか・・・


「年上・・・か・・・・・」


そんな時期ってやっぱあるもんだよな・・・・


俺だって・・・・



そう、それは数日前になるんだが・・・




俺はいつもの朝ランニングで走ってた時に、
たまたま一つのテニス場を通りかかった。

「朝からランニングなんて精が出るのね。」
そう言ってにこにこと笑いながら俺を見てる。

テニスコートに立ってこっちを見てる女を見つけた。年上っぽそうだ。
にっこり笑いながら走ってる俺にコートから小さく手を振ってくれていた。


何でか分からないが元々熱くなってた体温が更に上昇したみたいで、
顔が赤くなるのを感じた。

俺は必死に彼女から目を逸らそうとしたが、どうしても気になってしまった。



そのテニス場を通り過ぎた後も、
その女の笑顔がなかなか忘れられず、何度か振り返ってしまった。

(くっそぉ・・・俺どうかしちまったのかよ・・・さっきの女の顔が忘れられねぇ・・・)

むしょうに気にかかって仕方無かったので、
近くの公園で顔でも洗って休むことにした。

俺が走ってた場所のすぐ隣に位置していた公園へと入って行って水道で顔を洗った。

「ちっ・・・・」

小さく舌打ちしながら俺はまだ自分の顔が赤くなってるのが分かった。
顔を拭こうと思った時、俺は重大なことに気付いた。



タオルが無い。
どこかで落としてしまったようだ。
いつも肩に掛けて走ってるんだからどこかで落とせば分かるはずなんだが・・・

今日は途中色々と気がとられることがあった。

多分そこで落としたんだろうと思う。ちっ・・・今から探しに戻るのかよ・・・・


「これ、君のでしょ?」
突然背後から綺麗な声が聞こえてきた。

俺が驚いて振り向くとそこに立っていたのは、さっきテニス場で見かけたあの女だ。

「・・・なっ・・・・」
そいつが持っていたのは俺のタオルだ。


「さっき君が通った後の道にこれが落ちてるの見えたんでさ。追いかけてきた。」
またさっきと同じ笑顔で話している。

近くで見ると、ますます俺は顔が赤くなった。
可愛いというより美人で、どこか落ち着いた表情があって、
何か人を惹きつけるようなものを感じる。

それにしてもコイツ、俺のランニングについてきたのかよ・・・・?


「どうもッス・・・・」
俺は静かにそのタオルを受け取った。

「君、スゴイね。朝からこんなにハードな練習しててさ。何のスポーツやってるの?」
彼女は顔もスタイルも綺麗だが、何か特別なオーラを放っているように見えるのだ。

「テニスっす・・・」
「へぇ!君もテニスやるんだ!?じゃあ私と同じなんだね。」
それは分かってるよ。テニス場にいたんだから。

「学校の部活とかやってるの?レギュラー?」
「はい、一応・・・・・」
「うわぁ!じゃあ強いんだ!!」
彼女は目を輝かせて、まるで自分のことであるかのように喜んでいるようだ。

「私もね、レギュラーだよ!青春学園の高等部の2年☆」
「せ、青学ッスか!!?」
「あ、知ってる?」
「俺も青学の中等部ッスから・・・・・」
「うっそー!?すごい偶然!そうだったんだ〜!」


彼女は俺に興味津々と言った感じで次々と話し掛けてくる。

もっと話そう、と言うように公園のベンチを指差した。
俺もつられてそこに座ってしまった。

なぜか、彼女のことをもっと知りたいと思った・・・・


「私もさ、毎朝あそこで練習してるのよ。
 一応レギュラーにはなれたけど3年の先輩とやったらまだまだ負けるもん・・・
 たった1年年上なだけなんだけど、先輩たちがすごく高い壁に見える時だってある。
 だからね、何としてももっと強くなりたいんだ。
 それなら先輩の2倍・・ううん、3倍練習しなきゃ!って。」


似てる・・・・
この人、俺に似てる・・・・・・・



「俺もッスよ・・・前に負けた時以来、もっと練習しようって思ったんスから・・・・」
そう言うと彼女は目を見開いて、少し驚いたようだった。

自分と同じ立場の人間に出会えたことにうれしさも感じているように見えた。
勿論、それは俺も同じ気持ちだ・・・

「やっぱり誰でもそうなんだよね。
 負けることが次の勝利へ繋がるんだよ!
 負けるヤツほど強くなれるんだからね!だから一緒に頑張ろうね!!」

そう言って微笑みながら俺に言ってくれた。
彼女の笑顔に俺は一瞬顔を赤くした。

「そ、そッスね・・・・・」
「諦めなければどんな人にだって勝てるんだ・・・きっと・・・・
 だから私も毎日練習を続ける。誰よりも強くなるためにね!」

そうッスよね・・・

俺だって他の部員の練習メニューの何倍も毎日やってる・・・
いつか強くなってやる・・・・いつか・・・・・

「あ!こんな時間だ!そろそろ帰らないと学校遅刻しちゃうわ!」
気付けば時間はもう7時半近かった。


「あ、俺もッス・・・・!」
「今日は楽しかったよ!ありがとう!あ、えーっと・・・・名前・・・・・」
「海堂薫ッス・・・・」
「薫ちゃんか!可愛い名前ねvv」
「(か、薫ちゃん・・・!!?)」

俺は真っ赤になるのを感じた。

「私よ。また会えると良いわね!今日も明日も・・・練習お互い頑張ろう!!」

また最初の時と同じようににこにこと笑いながら俺に言った。
それだけ言うと、「それじゃ!」と言って公園を走り出て行った。




その時の彼女の声、行動、笑顔・・・
全てが頭に焼きついちまって離れねぇ・・・・

これが菊丸先輩たちの言う年上に憧れる時期ってヤツか!?



あれ以来、俺は毎日あのテニス場を通る。
その度に彼女は俺に手を振ってくれる。



そういえばあいつが言ってた言葉・・・


負けるヤツほど強くなれる・・・
でも言葉矛盾してねぇ?

もしこれが本当ならウチの部の連中(主に越前・手塚・不二)は負けなしだろ?
強くなれねぇってことか・・・・?


END


もう先日のアニメのあのシーンにメラ萌えだったものですから!!
いや一番好きなのは不二の「人が苦しむところを見るのは〜」のセリフですがVv
もうどうしても書きたかったのでつい書いてしまいましたv
海堂の年上ヒロインに憧れるお話をVvにしても短いのう・・・名前変換少ないし;