つまみ食い

「うわーちゃんさっすがーv」
「えへへ・・有難う」

調理室。ただいま料理クラブは調理実施中。
今日のメニューはポテトグラタン!

「ねぇねぇ、チーズの量このくらいで良いかなぁ?」
「うん。良いと思うよ。」


:料理クラブ部長
 気が強く、負けず嫌いだが料理は大得意。



わいわいがやがや

とそこへやってきたのは・・・・



「うお〜美味そうなにおい!」
調理室の扉をガラリと開けて入ってきたのは2年の桃城武だった。

「も、桃城くん!!」

テニス部強豪というせいか、女子に人気の桃城だ。
その桃城が料理クラブに顔を出したのだから、女子軍は大喜びだ。


と、言っても、最近彼は料理クラブに通い詰である。




「桃城!また来たわねっ!!」
真っ先に喋ったのは

「よっす!先輩!」
「またつまみ食いに来たんでしょ!さっさと帰ってよね!!」

そう。桃城が毎日料理クラブへ通う理由はつまみ食いのためである。

「そんなかたいこと言わないでくださいよ!」
「駄目っ!私たち料理クラブが一生懸命作った料理、
 あんたなんかにいっつも食べられてたらたまんないわ!」
「そう言うなって!」

そんな平行線なやり取り。部員から見ればいつもの光景である。



「うまそー!」
そう言いながら近くの机の上にあったグラタン皿にスプーンを近づける。

「ちょっと!それミホの作った物でしょ!!」
「ミホ先輩ー貰っても良いッスよね?」
「へ?あ、う、うん!」

ミホにしてみればあの人気の桃城に食べてもらえるならという心境らしい。

「ミホっ!!」
「良いじゃん、!食べてくれる人がいる方が作り甲斐あるよ!!」

部員の一人が言った。

「でもコイツの場合毎日毎日食べすぎなのよっ!」
は怒りながら桃城を指差して言う。
桃城は指差されて一瞬顔を上げたが、気にせずグラタンを食べる。

「あーもうっ!!」
「そんなに怒らないでよ、先輩ー?」
「だって毎日毎日コイツに料理食べられてたんじゃシャクでしょ!!」



「だって・・・桃城くんってテニス部でも人気だよ・・・?」
「そんなこと知らない!」

はプイと後ろを向くと、流し台へ向かって後片付けを始めた。


「ったくー・・多めに見てくれよ、先輩!」
「うるさいわね!今片付け中だから話し掛けないでよ!」

お皿や調理スプーンやらを洗いながら顔をあげずにが言った。



「も、桃城くん・・・あの・・・良かったら私のも食べて・・・・」
部員の一人が自分の作ったグラタンの皿を桃城に差し出しながら言った。

「ちょっと!何言ってんのよ!」
が手を止めてその部員の方を見る。

「え・・だってぇ・・・桃城くんに食べてもらいたいなぁって・・・・」
ちょっと照れくさそうに言う。

「そんなことしたらソイツが付け上がっちゃうでしょ!!」
「そう言わないでよ、!桃城くん!私のも食べてよ!」
「あ、あたしのも食べてほしいな・・・・v」


みんないつのまにか桃城を取り囲んでいる。



「あ、あんた達ねぇ・・・・・!もう良いわよ!知らない!」
はスネたように一人流し台でぷぅと頬を膨らます。

「マジ?サンキューな、みんな!」
そう言いながら桃城は部員たちのグラタンにがっつく。

「あ、そろそろ私たちも後片付けしよっか!」
部員たちも桃城が食べている間に後片付けを始めた。



桃城はまだ食べている。
どこにそれだけの量が入るんだって思うくらいに沢山。

ー、私先帰っても良い?」

自分の調理用具の片付けが終わった部員の一人が言った。

「うん。自分の片付け終わったんなら帰って良いよ。
 グラタン皿の片付けは
 
あそこでがっついてる誰かさんにやらせておくから。」

その言葉にうっと桃城はのどを詰まらせた。


「お、おい!そりゃ聞いてねーぞ!!」
口いっぱいにグラタンを含んで桃城が言った。

「みんな先帰って良いわよーv
 あとはあの桃城くんがやってくれるらしいからv」
は笑顔で部員に向かって言った。

「え・・・でも桃城くんにやらせちゃ悪いんじゃない・・・?」
部員の一人がそう言った。桃城はその様子を見ながらウンウンと頷く。

「大丈夫よ!
 私部長でどうせ鍵閉めだから最後までしっかり見張っておくから。」


その笑顔がかなりの毒を含んでいたことは言うまでもない。


「そ、そう・・・?」
その笑顔に圧倒された部員たち。

「じゃ、じゃあ私お先に失礼しますね、先輩・・・・」
そう言いながら以外の部員たちは先に帰る。

「えぇvまた明日ねv」
は最高の(黒い)笑顔で送り出した。



「さてと桃城くん、終わったらちゃんと食器洗ってちょうだいねv」
桃城ががっつく様子を笑顔で見ながらが言った。

「そ、そんな〜」

とか言いつつも食べるのはやめない桃城くん。

「っていうか毎日毎日迷惑じゃない!もう来ないでよ!!」

は笑顔はやめてはっきりと言いました。

「しょうがねーッスよ!料理クラブの料理うめーもん!」
「だからって毎日来られたら迷惑よ!」
「良いじゃないッスか!先輩以外の部員たちはみんな快く料理くれるし!」
「駄目!」


「なんでそんない怒るんスか・・・?」



「・・・・・・・・・・」




はちょっとスネたような顔して黙っている。
桃城は顔中に?マークを浮かべている。

「嫌なのよ・・・・・」
「だからそんなにまで俺が来ちゃ迷惑ッスか?」



「嫌なのよ・・・!私以外の女の子の料理をアンタが食べるのが!!」
は顔を真っ赤にして叫んだ。


「へ・・・・・・?」


「聞こえなかった?私以外の女の料理食べてるあんたが気に入らないの!」
桃城から目を逸らして、真っ赤になっては繰り返す。

「もう来ないでよね!!」



先輩・・・嫉妬ッスか・・・・?」
「なっ・・・馬鹿でしょあんた!!」



その「馬鹿」の意味は何なのか。

「当たり前でしょ!」と言いたいのか「勘違いするな!」と言いたいのか。

「桃城、あんた鈍すぎなのよ・・・・・」
赤くなって、下を向いて、はゆっくりと話す。

「なぁんだ。先輩、嫉妬だったんスねー
 じゃあ今度先輩の料理食わせてくださいよ!」
「思い上がるんじゃないわよ!!」
顔を赤く染めたままは桃城に向かって怒鳴る。

「俺も本当は先輩の料理食べたいッスよ。」
「へ・・・・?」



「今度からは先輩のも食べさせてくださいよ。
 俺、他の部員からは一口も貰わないッスから。」

そう言い残すと桃城は調理室を出た。

は真っ赤になったままポカンとその様子を見ていた。



「あっ・・・・!」
やっと我に帰ると扉の方へ走って廊下を歩く桃城に向かって叫ぶ。

「桃城ーーーー!!後片付けしろって!」
はさっきの表情とは一変して眉をつりあげて言う。

「悪ぃなー!!」
そう言うと桃城はそのまま走って行った。


「桃城っ!逃げる気かよ!!」


END


初の桃ドリー夢!
やっぱり桃城は食べ物ネタしか思いつきません・・・(汗)
ちょっとはず貸しがり屋のヒロインと強引な桃っぽく。
なんか微妙な話になってまいましたよ・・・これで良いのか・・・・