ポイ捨て厳禁

「ちっ・・・・。」

亜久津仁は今日も学校をサボった。
煙草を吸いながら適当にぶらぶらと道を歩いて時間をつぶしていた。

学校へ行くのは面倒だけど、行かないとやることが無いのだ。
結局公園のベンチで何時間か寝て、気付くと5時過ぎだった。



(誰か適当に殴ってストレスでも晴らすかな・・・)

いやそれは犯罪だってば、あっくん。(もうすでに煙草も犯罪だけど)

そう思いながらまた道を歩く。
当然ながらタバコも吸って。

(適当に会ったおっさんから金でも恐喝するか・・・)

とまぁ日常茶飯事のように犯罪行為を考えるあっくん。



するとそこに通ってきたのは何とも運の悪い、中年男性。

「おい、おっさん・・・。」

そう言ってその男性の前に立つ。
男性はその迫力に少々押されているようだった。

「な、なんだね、君は・・・・。」
震えた声で言う。

「金出せよ。」
「ななななな何を言ってるんですか。」

亜久津に一歩一歩追い詰められながら男性が言った。

「いいから出せって。」
そう言うと吸っていた煙草を自分の後ろびポイを投げ捨てた。
そして男性に殴りかかろうとしたその時だった。



「ちょっと!アンタ良い年してタバコのポイ捨てなんて!」

後ろから声がした。
女の子の声だ。


「あぁ?」


亜久津はそう言って振り向く。
思いっきり怒って。




そこにはさっき亜久津の投げ捨てた煙草を拾って片手に持って、
亜久津をにらみ付けてたっている少女の姿があった。

女の興味のない亜久津にしてみればただのムカツク女なのだが、
一般男子から見れば天にも召されるような美少女だ。

制服から見ると、どうやら青学の生徒のようだ。


「てめぇ、誰に向かって口聞いてんだよ。」

亜久津は体も振り返ってその少女の方を向いて言った。
その隙にからまれたあわれな男性は逃げる。

「煙草のポイ捨てが駄目なのは常識でしょ。大人のくせに。」
「(お、大人・・・?コイツ勘違いしてんのか・・?)
 てめぇ、口の聞き方には気をつけろよ。」

「良いから!コレ、ちゃんとゴミ捨て場に捨ててきなさいよ!」

そう言ってタバコを突き出す。

「俺に指図するんじゃねぇ。」

亜久津は今にも殴りかかろうと準備をしている。

「アンタさっきから俺様的発言が多すぎ!
 自分のごみは自分で片付けるのって常識でしょ!」

そう言って亜久津にまたタバコを渡そうとする。



「てめぇもいいかげん調子こいてんじゃねーぞ。」
そう言ってその少女に殴りかかろうとした。

亜久津の手が、少女の美しい顔にクリーンヒット、かと思われた。



少女は顔をスッと横へ逸らすと亜久津の手をかわした。
「口で適わなかったら暴力?よくないわよ。」

自信満々に言う。

「てめぇ・・・・。」
半ギレ状態の亜久津はもう一度、
今度はさらに強く、速く彼女の顔面めがけて殴る。

だが、少女はその手が止まっているかのようによける。
サッと下へ回り込んで亜久津の手の下からすり抜け、
亜久津の後ろ側へ回った。

すると今度はそこから亜久津の首筋に向かって蹴りを入れようとする。


「なっ・・・・」

流石の亜久津も驚きを隠せない。

こんなに可愛くて、どこからどう見ても弱そうな女の子が、
亜久津の突きをかわし、首筋へ蹴りを飛ばそうとしているのだから。
そんな風に考えていた亜久津はそのままよけきれずにいた。



当たる!と思った。

だが衝撃は走らない。

少女は亜久津の首筋からわずか1mmくらいのとこで
ギリギリ蹴りを寸止めしている。

「まだまだね。」
そう言うと足を下ろして亜久津の目の前に立った。

「てめぇ・・・・」
「アンタ空手やってんだね。でも随分長い間練習してないでしょ。
 体ナマってるわよ。勿体ないわね、せっかく良い素質があるのに。
 練習もしないで強くなれると思った?」
自信満々の目つきで亜久津を見る。

さっきまではその表情がイライラしていたが今はそうは思えない。



「さ、これ、ちゃんと捨ててきてよね。」
そう言ってまた煙草を差し出す。

「けっ・・・」

亜久津はその煙草を手に取ると、また少女とは反対側に投げ捨てた。

「あーーーー!ポイ捨ては駄目だって言ってるじゃない!
 耳悪いんじゃない!!?」
「けっ、んな小せぇこと言ってんじゃねぇよ!」
「駄目よ!拾ってきなさい。」
「俺に指図すんな。」
「私の方が強いんだからねーーーー!!」
「俺だってさっきのは本気じゃねぇよ。」
「何よ!じゃあ本気で組手の勝負してみる!!?」
「やなこった。んなくだらねぇことに時間使ってるほど暇じゃねぇ。」
「何よーーー!!」

ぷぅと頬をふくらまして少女は言う。
その顔はとても幼く見えた。



「てめぇ、名前は?」
亜久津が横目で少女を見下ろして聞く。
「人に名前を聞くんならまず自分から言うのが礼儀でしょ。」

その言葉に亜久津はピキンときたがとりあえず言ってみる。

「俺は礼儀なんて知らねぇ。」
「じゃあ私も教えないから。
 知らないおじさんに名前なんて教えられないわ。」
「おじっ・・・・てめぇ・・・・(敗北)俺は亜久津だ。亜久津仁。」

「あくつ・・・?あれ・・・どっかで聞いたことある気がする。」
「まぁある意味で有名だからな。」
「あっ思い出した!確かテニス部のやつらだよ!
 山吹中の亜久津ってやつがすっごいムカツクって!
 って・・・・・えぇぇ!!?アンタ中学生!!!?」

「(コイツ本気で俺をおじさんと思ってたのか・・・?)んでお前は。」

があまりに大げさに驚くので亜久津は呆れて言った。

「えっと、。青学2年・空手部所属。」
「へぇ、空手部ねぇ・・・・。」
亜久津はまじまじとを見た。
「何か文句あるわけ?」



「!!?」
亜久津は何も言わず、の唇に自分の唇を重ねた。


「ちょっ・・いきなりっ・・・」

離れようと抵抗するが、頭をがっちり押さえつけられてて動けない。
いくら空手が強いと言っても、力の差だけは亜久津が数段上なのだ。
長い口付けのあと、亜久津はようやくから離れて言った。

「てめぇ、強い割に男に対して隙だらけじゃねーか。」
「(だってこんなの初めてだもん!)アンタ・・・・いきなり何すんのっ!!」

顔を真っ赤に染めては言った。

「良いだろ別に。どうせお前みたいな女フリーだろ。」
「し、失礼な!!私、彼氏いるんだけど?」
「物好きな彼氏だな。」
「なななななんてことをっ!遊びとはいえキスした女に向かって!」


「遊びじゃねぇぜ?」


「は?」


「遊びじゃねぇ。たとえてめぇに彼氏がいようが、
 そいつブッ殺してでも俺の女にしてやる。」
「なんつー強引な・・・・。」
「てめぇみたいな気が強ぇ女、気に入ったぜ。またな。」

そう言って亜久津はから離れて行った。
一人そこに残されたはポカンとその姿を見つめていた。


ハッと我に返ると、は亜久津の背中に向かって叫んだ。


「タバコのポイ捨てするなよーーーーーーーーーーーーーー!!」



初あっくんドリー夢です。
後半はあっくんじゃないですー・・・・
なんか思ってたのとちょっと違うような・・・
でもあっくんはやっぱあのくらい強い子が良いのかなぁって。
あっちなみに私も空手やってるんですよ!初段!!(誰も聞いてない)