へへん!
見てろよ跡部!!!
絶対に賭けに勝って、お前に今までの恨みを晴らしてやるからな!

恋の駆け引き 第5話


「榊監督ー♪」

そう叫びながら職員室へ入ってくるなり、まっすぐに榊先生のところへ走ってくる向日岳人。
マナーのカケラもありゃしない・・・・

そしてその後ろから苦笑しながらついてくるのは忍足。
その二人の登場に、『嫌だ』という感情を明らかにしているのが跡部と榊先生だった。


「向日・・・てめぇ・・・・・」
取り込み中のところを邪魔された跡部は拳を握り締め、
フルフルと怒りに震えているのが分かる。

「何の用だ、向日。」
榊先生はとても鬱陶しそうに向日をにらみ付けると冷めた口調で問い掛けた。

しかし向日はそんなのお構いなしと言った様子だ。
にこにこと無邪気な笑顔で(中身は黒いけど)その場で飛び跳ねるように榊先生の目の前に立った。


「監督ー!宍戸がケガして部室で泣いてますー!」
ウソが見え見えすぎだった。忍足は額に手を押し当てて『アホ岳人・・・』と呟く。



それで何だ。

先生は明らかに機嫌が悪くなっている。
「えーっと・・・だから監督に・・・・」
「そこら辺にあまっているマネージャーにやらせておけ。」
「え・・・だから・・・その・・・宍戸が死ぬ前に監督に会いたいって!」


もうちょっとマシな嘘は無いのか。
私が心の中で思った。

いや、私だけじゃなかったと思う。忍足も跡部も先生も・・・


「そうか。なら『逝ってよし』と伝えてこい。」
あっさりと振られてしまった宍戸だった。可哀想に。
榊先生は全く彼を相手にしようとはしていない。
とても不機嫌そうに、机を指でトントン叩いていた。



そこへ、やれやれと言わんばかりに忍足がフォローに入ってきた。

「あ、そういやちゃん!さっき数学の霧島先生が呼んどったで?」
「え、ウソ!?マジ?」
向日よりはマシだったけど嘘バレバレ・・・
でも私もそろそろこの状況にうんざりしてたし、忍足に乗ってあげるといたしましょう。

「あぁホンマや。あっちにおったで、ちょっとこっち来ぃな。」
「うん分かった。」
そう言うと忍足は私の手をひいて職員室を出て行った。

「(ナイスだぜゆーし・・!!)」

「おい待ちやがれ忍足!!!」

そう、勿論跡部はこのまま見送るはずもない。
慌てて忍足の後を追って職員室を飛び出した。


のだが・・・・・・



「あ、跡部!!」
向日は自慢のその身軽さですぐに跡部に追いつくと、彼の腕にぶら下がった。
『捕まる』というより『ぶら下がる』という感じなのだ。


「てめっ・・向日っ!何しやがんだよっ!!!」
跡部は必死に向日を振り払おうと腕を振り動かす。
しかし向日はそれを難なくかわし、跡部のポケットに入った携帯を奪った。


「おい向日っ!返せ!」
携帯を取ると向日は跡部の腕からヒョイと離れた。
取り替えそうとした跡部の手は見事にからぶってしまった。

そして向日は勝手に跡部のメモリを探り始める。
「うっわー!何この女の数!?」
メモリを開いて叫んだ。

「てめぇ・・・プライバシーの侵害で訴えるぜ!!?」
「じゃあ跡部は今まで別れて来た女に慰謝料請求されるぜ?」
「付き合ってて別れただけじゃ慰謝料は取れねーよ!」
これは跡部が正しいのだった。と、そんなことは置いときまして。

「なーなー、ここに入ってる女の番号に『跡部が一人の女の子を必死に落とそうとしてるんだぜ』
 ってメールしたらどうなるだろうなー!」
「殺されてぇのかよ。」
跡部は後ろにいた樺地に合図を送る。

「ダーメッ★あー、そういえばゆーしどこ行っただろうなー。
 跡部、この携帯借りとくぜ♪」
それだけ言い残すと向日は跡部の携帯を持ったまま去って行った。


「アイツ・・・・ッ!!行くそ、樺地!」
「・・ウス・・」
跡部だって負けてはいられない。樺地に合図すると向日の後を追った。


その頃の忍足と

ちゃんごめんなー。色々振り回してしもて・・・・」
「え・・・あ、うん・・・・(全くだよホント・・・)」
「せやけど絶対跡部なんかと付き合ったらアカンで。ロクなことないからな。」
「うん。今は付き合う気は無いから、安心してよ。」
「それならええねんけど。気ィ付けぇや・・・」
「(何が良いんだか。賭けのこと?)分かってる忍足くんも大変だね。」
「せやなー。(今一番大変なのは岳人やけど・・・・)」
「(あたしはもっと大変よ)あ、あたしそろそろ行っても良いかな?家帰らなきゃ・・・」
「あぁ、そういや下校途中やったもんな。ホンマ、悪かったなぁ・・・
 それよりこの後暇か?暇やったら今日のお詫びがてら俺と・・・vv」
「(コイツも跡部と同等か!)あーごめん。今日はちょっと・・・・じゃーね!」
そう言って私は逃げるように去って行った。



その頃の向日&跡部ペア。


向日は携帯を持ったまま、逃走中だった。

だが、しばらく走って行ったところで、ある女子生徒の会ったのは彼にとっては幸運。
ちなみに向日にとっての幸運ということは跡部にとっての不運でもあった。


「(あ、あの子確か前に跡部と付き合ってた・・・やったぜ!!)
 あ、ねー君ちょっとーーー!!」
「え?何?」
「えーっと、名前、神楽さんだっけ?跡部と付き合ってるよね?」
「え・・な、なんでそんなこと・・・・・///」
その女子生徒は顔を真っ赤に染めた。
「跡部がさー、最近さん狙ってるんだよ。あのE組のさん。」
「え・・・?」
「跡部さー、今もさん追っかけてんだぜ!ホラあれ!!」
後ろから向日を追って走ってくる跡部を指差して向日がその女子生徒に話す。

「うそ・・・そんな・・・・・」
女子生徒は今にも泣きそうな顔になった。


「向日っ!俺様の携帯返しやがれっ!」
追いついた跡部が向日を発見するなりそう叫ぶ。

だが、その言葉に返答したのは向日ではなく、例の女子生徒。
「景吾くん・・・!さんと付き合おうとしてるって本当なの・・・!!?」
「(げ、神楽!?なんでコイツが・・・)う、ウルセ・・・ちょっと黙ってろ・・それより向日っ!!」


「跡部、ガンバ☆」

そういい残すと向日はまたその場を去って行った。
勿論跡部の携帯を持ったまま。



「おい向日っ・・・!!」
「景吾くん・・・・!!」
女子生徒は跡部を思いっきりにらみ付けた後、


バシーン


思いっきり平手打ちした。
「馬鹿馬鹿っ!私だけって言ってくれたのにっ!!!」
そう言ってなきながら去って行ってしまった。


「クソッ・・・・」
ヒリヒリした頬を軽く手で抑える跡部。


向日には見事に逃げられてしまった。




おいおいまさか・・・俺様が賭けに負けるなんてこと、ねーよな・・・・・・

第6話へ

誰だこれは・・・!!(またですか)
岳人が完全にキャラ違ってますね・・・アハハ・・・・(何)

ってかこの跡部たんの惨めさ・・・
観月の恋ハーシリーズに似てますねぇ・・・(笑)
いや、なんで私は毎度毎度こういう妙なテンションが好きなのでしょう・・・(汗)

にしても一向に終わりが見えませんね。(爆)