恋のハードル 第4話
「!!」
「あらどなただったかしら?」
朝の授業前、の教室へ突然入ってきた観月はじめ。
そしてそれに黒笑顔いっぱいに返事をする。
「どなただったかしらじゃないでしょう!?
そろそろスクールに顔出してください!」
「何ですか、あなたは。
いきなり人の前に現れてスクールに来い?ストーカーみたいね。」
はにっこりと笑って言う。
そしてその様子を息を呑んで見つめるクラスメート達。
「!話くらい聞きなさい!」
「また可愛い許婚の自慢話?聞きたくないわね。」
「いい加減になさい!今日の授業後、必ず来るんですよ!」
そう言って観月は教室を出ようとした。
「今日?何のことかさっぱり。今日は木更津くんとデートがあるのに。」
「!!!」
『木更津とデート』この言葉に反応してしまう観月。
そう、は本気で行く気だ・・・昨日なりゆきで約束したデートに・・・・
「・・・・・?」
「あーぁ!変な男がクラスに上がりこんで何か言ってるわー」
キーンコーンカーンコーン
「観月!チャイム鳴ったぞ!自分の教室へ帰りなさい!」
「ちょっ・・・先生・・・!」
チャイムと共に現れた先生が観月に向かって言う。
観月ははぁとため息をついて自分の教室へ戻って行こうとした。
そして観月が教室へ帰ろうとドアを開けた時だった。
「えー・・・今日は転校生を紹介する。・・・綾小路、入って来なさい。」
「へ・・・!?」
先生のその言葉に教室を出ようとしていた観月が振り返る。
細い足で一歩一歩黒板の真ん中へと近づいてくる。
その姿を見た瞬間、さすがのも硬直した。
「初めましてぇ!
今日からぁ、このクラスに入ることにありましたぁ!綾小路麗華でーす!」
「「麗華ちゃん!?」さん!?」
観月とが声をそろえた。観月、教室帰らなくて良いの?
「観月、まだいたのか。二人とも知り合いか?」
「「え・・まぁ・・・・・・」」
と二人が言うや否や、麗華が大きな声で挙手しながら言った
「はーい!知り合いでーす!だってぇ、私ぃ、はじめちゃんの許婚だもんVv」
約5秒ほど、クラス全員の心臓が停止した。
「きゃぁっ・・・Vv麗華ったらまた言っちゃったぁv恥ずかしい!!」
と頬に両手を当ててキャピキャピ騒いでいる。
「麗華さん!皆の前では会わないと約束したでしょう!!」
観月は顔を赤く染めて言った。
「だってぇ、ほんとにことだしぃVv
それに昨日テニス部の人たちにバレちゃったんだから良いじゃん!
これからははじめちゃんをずぅっと一緒だよぉVv」
その様子を見て黒いオーラが全開になる少女。もちろん。
「せんせーい!
早く観月くんを自分の教室へ追っ払って授業始めましょー!!」
が手を挙げて言った。
「あ?あぁ、そうだな・・・観月、とりあえず教室へ戻りなさい。」
さすがに麗華の許婚発言には一瞬硬直していた先生も、
の言葉で我に帰って言った。
「えぇっ!私はじめちゃんと同じクラスじゃないのぉ!?
やだよぉ!はじめちゃんの隣じゃなきゃ嫌!」
麗華は頬を膨らませて言った。可愛いには可愛いのだが、
さすがにこの性格は簡便してくれという様子でクラスは見る。
プチッ
どこかでは何かが切れる音がする。
「綾小路、文句を言うな。早く自分の席に着きなさい。」
「先生!早く授業始めてください!!」
「はじめちゃぁんーーーVv」
「ぼ、僕は帰りますから・・・・・・」
そう言って観月はようやく自分の教室へと帰って行った。
((((((((俺(私)このクラスでやって行けないかも・・・))))))))
クラスの誰もがそう思った。
麗華は毎放課観月の教室へ会いに行っていた。
観月は「いい加減にしてください・・・・」と言うのだが、麗華は聞く耳を持たない。
「・・・・・・・・・・・」
その様子に黒オーラ全開、爆発寸前。
一体どうなることやら・・・・・・
しかしその日はが一日こらえた成果、何事も起こらずに済んだ。
そう、この授業後までは。
「はじめちゃーーんVv一緒に喫茶店行こうっVv」
授業が終わるとすぐに麗華は観月の教室へ行って観月に飛びつく。
「麗華さん・・・僕は練習があるんですよ・・・・」
「えぇ〜だってぇ!クラスも違うしさぁ!
せっかく同じ学校に入って来れたんだからぁ!」
「大体麗華さん、実家の方の学校はどうしたんですか!?
家に帰らなくて良いんですか?」
「うん!心配しないでVvこの前ね、ママに電話したの。
『はじめちゃん、あたしがいなくなったら寂しいって言うから
あたしこっちの学校に行きたい』って!
そしたらこっちの学校に通えるようにしてくれたの!
もう自分の部屋も出来たんだよぉVv」
「誰がいつそんなこと言ったんですか!!」
「はじめちゃんの顔がそう言ってるのぉVv」
そう言いながら麗華はぎゅっと観月のブラウスを握り締めた。
「ふぅーん・・・そんなこと言ってたんだぁ、は・じ・めちゃん」
突然背後から現れたのは!
なぜこの娘はこんなに突然現れるんだと観月は思う。
「はじめちゃんー喫茶店行こうよぉー」
なんか全く無視という感じで観月の制服を引っ張る。
ブチブチッ・・・
麗華が来てからというものは血管切れまくりのようですが、
大丈夫なのでしょうか・・・
「麗華さん!少し黙っていてください!!!スクールへ行きますよ!!」
「スクール?私そんなとこ行かないわよ。」
「じゃあなんでこのクラスに来たんですか!!」
「そんなの決まってるじゃないv愛する彼に会いに来たのよ。」
はにこりと笑った。
そして教室で自分の席で帰る支度をしている前髪の長い美少年の元へと歩み寄る。
「木更津くんv今日、どこ行くの?」
「あっさんVvどこへ行きたいの?」
「んーーー・・・駅前のクレープ屋さん、この前友達と行ったら美味しかったんだ。
木更津くん、一緒に行こうよ♪」
そう言って笑顔笑顔。
「くすくす良いねv行こう行こう」
そう言って自分のカバンを持った木更津はと一緒に教室を出ようと扉へ向かう。
「ちょっ・・・!木更津!!!スクールはどうするんですか!!」
「はじめちゃん〜喫茶店〜」
「スクール?そんなものあったっけ、木更津くん?」
「さぁ・・・・?」
「木更津・・・覚えていなさい!!」
「ねぇ〜喫茶店行きたいよぉ〜」
とまぁ見事にかみ合わない会話。
そのままと木更津は教室を出て行った。
「はじめちゃんってばぁ〜!!」
「五月蝿いですね!少し黙っていなさい!!」
観月は初めて麗華に向かって怒鳴った。
「は、はじめちゃんがぁ・・・・」
そう言いながら麗華は目に涙をためて上目使いに見る。
(ハッ・・・しまった・・・麗華はすぐ泣くんでしたね・・・・
そして泣かせたら麗華はすぐに親に言いつけますから・・・・・
そのために今まで僕が気を使ってきたんでしたっけ・・・・・)
だがそうこう考えてるうちに観月の頭の中にはふとある考えが浮かんだ。
観月はんふっと軽く口元で笑うと言った。
「分かりました。喫茶店へは行きませんが、
今日はスクール休んで麗華さんと一緒に出掛けますよ。」
「本当ぉー!?やったぁ〜Vvやっぱはじめちゃん愛してるよぉVv」
そう言ってはまた観月に抱きついた。
「行き先は駅前のクレープ屋ですよ。さっきたちが言ってて思い出したんですが、
僕もあそこへは一度行ってみたかったんですよ。」
「あれぇ?はじめちゃんって甘い物好きだっけぇ?」
「え・・・?き、嫌いじゃありませんよ・・・・」
「そっかぁVVじゃ、行こ行こぉ!!」
そうして二人も一緒にクレープ屋へと向かうことになりました。
「おっと麗華さん、行く前にコレを付けてください。」
そう言って差し出したのは黒いサングラスと帽子とマスク。
「それから私服に着替えてください。
麗華さんは東京に来てから一度も来てない服にしてくださいね。」
「えぇ?なんでぇ?はじめちゃんと一緒に着替えるのぉVv?」
「馬鹿言ってるんじゃありません・・・制服じゃ目立つからに決まってるでしょう。
さっさと自分の部屋で着替えて来なさい。」
10分後
観月と麗華は校門で会った。
そして丁度着替え終わって
校門を出て歩いていると木更津に見つからないよう、
二人も校門を出る。
(んふふふ・・・・尾行作戦、開始ですね・・・・
木更津・・・にA以上のことをしようものなら
その場で僕が裁いてやりますよ・・・)
「わぁー!はじめちゃんとデートデートVv」
甲高い麗華の声はよく響くが、
今はマスクのおかげで声がこもって幸いと木更津には聞こえていない。
観月と麗華はそのまま二人の後に続いてクレープ屋へ向かった。
「でも本当に嬉しいなぁ・・・さんとクレープ食べに行けるなんて・・・・v」
道を並んで歩いていた二人。ふと木更津がに話し掛けた。
「え?あ、うん!そうだね・・・・!!」
は突然話し掛けられて驚いたように答えた。
「なんか元気ないね・・・僕といてもつまらない・・・・・?」
木更津は少し悲しそうな顔をして言った。
「え・・・?ぜ、全然そんなことないよ!!はじめといるよりはずっと楽しい!」
(・・・・・・・・・)
「そう?でもさ、まだ気になってたりするんじゃない?観月のこと。」
「ぜ、全然気になってないってば!!あんないい加減な人、大っ嫌い!!」
『大っ嫌い』・・・・・その言葉が苦しい。
観月はその会話を聞きながら思っていた。
どうして・・こんなことになってしまったのか・・・・・
第5話へ
前回終わりだけシリアスに決まってたので
今回はシリアスに行くのかと思いきやまたもやギャグに走りました。
でもまた終わりだけシリアスに。(笑)そして次回はまたギャグに。
しかしこの「恋のハードル」シリーズ、一体いつまで続くやら・・・・(汗)
でもまだまだ続きますよ!!
ネタならたっぷり考えてありますから!!(笑)
次回はクレープ屋での尾行です。
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