クリスマスプレゼント 中編

の朝の一件以来、
テニス部は今までには無いほどに活気付いていた。

元々練習熱心な部活だった。氷帝一と言っても良いほどだった。
だが最近はそれが更に増して信じられないほどの練習っぷりだ。

「流石ですね、榊先生・・・・」
審査のため、テニス部の練習風景を見に来ていたが呟いた。
「全くだ・・・いつもこうなら良いのだがな・・・・・」
「良いじゃないですが、今年だけでもこれだけ成果が出れば。
 来年も私の意思を引き継いでこの行事を行ってくれる方はいれば良いのですが。」
「そうだな。だが多分それはいないと思うぞ、・・・・」
「そうですか?結構面白そうですし、皆さん興味半分にやりたがると思いますけど。」
「・・・・・・・」

「おい・・・・・」
見学に来ていたにいち早く気付いた跡部。
彼もいつにも増しての練習だったが彼女を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。

「跡部くん、ごきげんよう。」
「この前朝会で言ってた話、本当なんだろうな。」
「決まってるじゃないですか!最も優秀だと思われた方、
 つまり優勝者の言うことでしたら私は何でも従いますよ。」
そう言ってはニッコリと微笑んで見せた。
「へぇ・・・(ニヤリ)それで、その判定の基準は何なんだよ。」
「言いましたでしょう。最も部に良い影響を与えたと思われる方に、と。」
「だから、それはどうやって判断すんだよ?」
「そうですねー・・・寮の得点でも計算しましょうか。」
「(ハ○ーポッター・・・?)あぁ?あんだよその得点ってのは・・・・」
「冗談ですよ。」
「・・・・・・・・」
「そうですねー・・・私と先生方とで話し合って決めようかと思ってますが。」
「フフン・・そうか・・・・・」

それだけ話して跡部は得意げにコートへ戻って行った。


そんな跡部を見ては一言。
「人間、あれだけ自惚れていられると幸せなモノですよね。」
「あぁ・・・でもな、そういうことはアイツの前では口に出すんじゃないぞ。」
「勿論ですよ。」



そんな会話が繰り広げられる中、当然部員達は静かなバトルを繰り広げているのだ。

「いくぞー!ムーンソルトッ!!」
そう叫びながらテニスコートで飛び上がっているのは言わずと知れた向日。
心なしか、いや、心なしでなくともいつもの2倍はありそうな勢いがついている。
彼の打ったボールは相手に触らせる一瞬の隙さえ与えないまま、見事にきまった。

「へへん。見たか跡部ー!優勝は俺だぜーッ!!」
トンと地面に着地すると、自慢げにそう言い放った。
どうやら先ほどの跡部の自信満々の態度に対しての当てつけだったらしい。

対する跡部は『俺様に勝とうなんて100年早えーよ、バーカ。』とは言ってないが、
そうとでも言いたげに鼻で笑って見せた。

「岳人、お前のムーンソルトが調子良いんは分かってるけどな、勝つんは俺やで。」
忍足は浮かれる岳人に一発かます。

「おいおい!向日先輩のムーンソルト、ますますすごくなってるぜ!」
周りで見ていた少年の一人が言った。

「向日くんは随分スタミナがつきましたね。
 あれならきっとかなりの長期戦にも耐えられる持久力だと思いますが。」
向日の様子を見ていたもそう言った。
「あぁ、にしてもこの影響っぷりはすごいものだな・・・・」
「えぇ。これでテニス部も安泰でしょう。」
「いや、それはわからんぞ。今年はお前がいたが来年も同じことをやる生徒がいるとは・・・・」
「いなければ鳳くんにでもやらせれば良いでしょう。
 あ、そうすればきっと女子テニス部の強さがグンと上昇するでしょうね。」
「・・・・・」
言って良いコトなのか悪いことなのかは、あえてつっこまないようにしよう。


そんなと榊の会話が飛び交う中、
忍足と向日の心情は二人とも一つ。二人の心は一つ・・・!では無いですが。


(優勝は俺だぜ!)
(優勝は俺やな!)


だがそう思ってるのは当然ながら二人だけではない。

「あ、榊監督。あちらも見てくださいよ。
 向日くんや忍足くんにも勝らずとも劣らずですね。」
彼女がそう言ってもう一方のコートに目を向ける。
それに続いて榊もそちらの方向を向いた。


「一・球・入・魂ー!」

パコーーン
相手コートの選手は一歩も動けない。

ジューーーッ
ボールの当たった痕は黒く焦げているのが分かる。

「宍戸さんッ!見ましたっ!?俺のスカッドサーブ、ますます威力上がりました!!」
「(コイツ・・・・)あ、ああ。スゴイな・・・・」
「やっぱ俺達のダブルスは俺のサーブを磨くべきだと思いまして(俺が優勝ですね)」
どことなく黒さを持った笑顔で鳳が呟く。
しかし宍戸も男としては今回の争奪戦に加わらないはずもない。

「確かに、お前も強くなってるよな。サーブだけは。」
ちょっとした挑発語。
温和な彼にしては非常に珍しい。それだけ彼もスミには置けないということだ。

しかし、その言葉に鳳が開眼した。(違)

「何か、言いました?宍戸さん・・・・」
「(怖ッ・・・)いや、、気にするな。」
宍戸は中途半端な返事を返した。
しかしそれがますます鳳に火をつけてしまう。

「青学との試合、最初のワンゲームを取ったのは全部俺のサーブのおかげですよね?
 あのワンゲームで試合の流れが俺たちに傾いたし、
 あのワンゲームが無かったら乾さん達に追い上げられた時に負けてたかもしれないですよね?
 そういえば次のゲームで乾さんのサーブ返したのも俺ですよね?
 それを宍戸さんは『サーブだけ』の一言で片付けようとするんですか・・・・・」

ハッキリ言って滅茶苦茶怖い。

宍戸だって、「お前が返した玉を攻めに変えたのは俺だ」とか、
「俺の瞬発力がなければあの得点は無かった」とか・・・・
色々と言い分はあるものの、とりあえず、

触らぬ神にたたりなしってことで黙っておくことにした。

だが、そんな二人へ水を挿すように現れたのは
ツタツタと二人のいたコートに入ってくると先ほど鳳のサーブが命中した地面に近寄って、
そこをじっと見た。

「あ、さんっ!見ててくれたんですね、俺のサーブ!」
鳳はの存在に気付くや否や、タタッと彼女に駆け寄った。
しかし、彼女は鳳のサーブ痕を見て一言。

「またコート焦がしちゃって・・・・今年テニス部は部費赤字ですよ。」
ちょっとショックだったりする鳳・・・かと思いきや、彼はそんなヤワじゃなかった。
「すみません先輩・・・俺すぐ調子乗っちゃうんで。
 あの、もしかして部費が足りなくなるようなことあるんですかね・・・?もしそうなったら・・・・・」

鳳はにとっては株価が高い。(と思われる。)
少なくとも、他のレギュラー陣(跡部・忍足など)に比べれば一番だろう。
彼は常に彼女の迷惑にならない行動を取り、彼女の前では常に本性(腹黒)を隠している。

いや、それに関してはも十分腹黒い・・・とも言えなくもないのだが。

「多分大丈夫ですよ。適度に練習頑張ってくださいよね。」
それだけ言ってはまたツタツタとコートの外に出て行った。

「鳳くんのサーブの威力も大したものですね。宍戸くんの瞬発力も物凄く上がってます。」
「あぁ。大した影響っぷりだな。」
「えぇ。だから是非来年もこの企画を・・・・・」
「その話はもう良い・・・・・」



「あ、榊監督、あちらもスゴイですよ。」
そう言ってが指差したコート。
今度はそこにいたのは芥川ジローだった。
しかし、彼も普段とは明らかに違う。
いつも眠そうにしている彼が、今日は目をカッと見開いてやる気満々なのである。
いや、既に今寝ていないという時点で奇跡に等しいのだが。


は俺のだもんね〜♪)
そんなコトを考えながらラケットを構えるジロー。


「ジローちゃんもいつもあぁなら・・・・」
「その通りだな。」
「でも私は眠ってる可愛いジローちゃんの方が好きですよ。」
「・・・・・・、そういうことは芥川に言うものじゃないぞ。」
「勿論ですよ。」




こんな様子な氷帝学園テニス部。
さて、勝利の女神は誰に微笑むのか。

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なんか長くなってきちゃったので3話完にしちゃいました。
もうあとは結果発表だけなのですがね・・・・。
っていうかいっそ中編飛ばして前編→後編でも話分かるかも・・・・