【波乱のSt.Christmas】

やって来たクリスマスパーティー当日。
どの生徒も皆楽しそうに支度をしている。

女生徒は髪を整えたり、服を選んだり、軽くメイクしてみたり。

男子生徒も普段は気にしない細かな寝癖までしっかりチェックする者も少なくない。


そして夕方、クリスマスパーティ開始の午後6時が間近に迫ってきた。
「ゆーうたくん♪」
そう言って礼拝堂の前に姿を現した
ちなみに裕太は10分も前からこおの待ち合わせ場所に来ていた。
1秒でも遅れたら、後からどんな不幸が降りかかるか分かったものではない。

「あ、どーもッス、先輩・・・・」
裕太は恐る恐る顔をあげた。

そして、一瞬とはいえの姿に見とれてしまったのは不覚とも言えよう。

彼女は白いダッフルコートに身を包んでいて裾からは赤いドレスが見え隠れする。
いつもストレートに下ろしてある髪が、
今日は綺麗にまとめられて飾ってある。
化粧っ気は無いが、いつもの数倍も綺麗に見えた。

「じゃ、行きましょう、裕太くんv」
「は、はい・・・」
そう言って歩き出すに裕太は顔をほんのり赤く染めながら着いて行った。


そして更にその二人の後を付ける影が3つ。
「全くムカつきますね。」
「ホントだよ・・・まるで僕たちへの当てつけだよね。」
当然、当の本人裕太に当てつけるつもりなど全くないのだが。
というよりそんなこと怖くて出来ないのだが。

「観月、木更津・・・やっぱりこういうのは・・・よく無いんじゃ・・・・」

何か言いましたか?

このまるでストーカーのような行動に罪悪感を感じている赤澤。
そんな彼を黒いオーラで一掃する観月。
赤澤は二人を取り巻く黒い空気の中、
とても身を縮めて二人と共に礼拝堂の中に入って行った。

ちなみに彼らは結局女生徒を誘っていない。誘われたコトも断っていた。
というわけで、生徒会長の提案をものの見事に破って参加しに来ている状態である。

と言っても当然ながら彼らの目的はなのだが・・・・・


礼拝堂の中は、毎年ながらすごい。
天井・壁は一点の緩みなく飾り付けされていて、とても綺麗だった。

そしてテーブルの上にはこれでもかというほどのご馳走たち。



「あ、裕太くん。私生徒会長で最初の挨拶があるので、少し待っててくださいね。」
「(か、開放される・・・!!)は、はい・・!分かりました。」
「他の女性とくっ付いたりしては駄目ですよ。貴方は私のですからね。」
「は、はぁ・・・」
そう言っては裕太を残してスタスタと前へと歩いて行った。


「観月見て、裕太が一人になった。くす・・・・」
「んふっ良いチャンスですね・・・・」
「(やっぱり俺も強力させられるんだろうなぁ・・・・)」


3人がそんなコトを考えているとが前に立って、マイクを握った。

「皆さん、今日はクリスマスパーティへの参加ありがとうございます。
 今年も存分にこのパーティを楽しみましょうね!
 そして今回、お相手が見つからなかった可哀想なお方、ご愁傷様です。
 適当にそこら辺に余ってる生徒にでも声を掛けてみてくださいなv
 来年は、素敵は方と組めると良いですねv」


((((((((((来年もやるんかいっっ!!)))))))))
一部の生徒は心の中で突っ込んだ。


「では、皆さん、メリークリスマス!!」
彼女がそう言うと拍手が喝采する。
「折角の男女ペアです。たまには中学生の境界線でも越えてみてくださいvv」

この『中学生の境界線』というのが何のことかは悪魔で個人の判断に委ねられる。
そしてはそれだけ言い残すとまたスタスタと裕太の元へと戻って行った。


「さぁ裕太くんv今夜は宜しくお願いしますね。」
そう言って裕太の両手を取り、ニッコリと笑った。
「は、はぁ・・・・」
裕太は気のない返事で返す。

とその時。


スッ


なにやら金属製の刃物が裕太の横ギリギリをすり抜けた。


グサッ


という音を立てて、その刃物は壁に刺さっていた。
よく見ると、料理を食べるために用意されていたフォークである。
裕太はそのフォークの飛んで来たと思われる方向をそっと見てみた。
するとそこには

「すみません裕太くんv手が滑ってしまいました。」

そう言ってニッコリと笑いながら落とした・・・いや、投げたフォークを拾いにくる観月少年。


「観月さん。気をつけてください。
 私の大切な裕太くんのお顔に傷がついたらどうしてくれるんですか。」
は裕太の手を取ったまま観月に向かって言う。
裕太はここは下手に口出ししない方が良いと思い、取りあえず黙っていることにした。

「赤澤くん、部員はしっかり監督してくださいよ。
 こういうのを放し飼いにされると生徒会長の私もこまりますからね。」
「俺に振るな・・・!!」
既に赤澤少年は争奪を諦めていた。と、いうより、諦めざるを得ない状況である。


「裕太くん、行きましょうv」
そう言って裕太の手をひいて行こうとした

が、しかし。
彼女らが会話している間にも腹黒い人間というのは計画を練っているものである。


「観月、準備良い?」
「勿論ですよ。じゃあ行きますよ、木更津。」


パシュッ


何かが飛び交った。

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